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まい・でぃあー 08








「ジェーイ!」



心地好い眠りに就いていたぼくは、とんでもない圧力に問答無用に起こされた。




「ジェイー、会いに来たよっ」

「貴女、毎日毎日全力でのし掛かってくるの止めてください。ぼくが死んでしまいます」

「ジェイ、・・死ぬの?」



いや、貴女の体重で死ぬほど柔な体してませんけどね。

いつまでもぼくの上でぼくと会話する彼女は、あの日から毎日こうして来るようになっていた。


理由としては、ぼくが居ないとイヤだ、という何とも幼稚なもの。こんな場面をフィーネさんに見られでもしたら、誤解でもされたら・・・・。





「退いてもらえます?」

「えーっ、私まだぎゅうってしたいもん」

「窒息しします」

「やだー」




駄々を捏ねられても困る。毎日毎日、よく飽きもしないで、





「あの、ジェイさん?」

「フィーネさんっ?」



勢いよく起き上がると、上に乗っていたふぁーすとさんは大きな音を起ててベッドから落ちた。

でも今はそれどころじゃない。





「いったぁ・・っ、頭打ったっ」

「フィーネさん、誤解しないで下さいっ。彼女が勝手に、」

「ふふ、解ってるよ」

「むぅ・・・・無視しないでよ」




フィーネさんはクスクスと笑って朝食の支度が出来たと言って部屋から出ようとした。

すると、何かを思い出したようにまたこちらを向く。





「ふぁーすとさんのもあるから」



そう告げては今度こそ部屋を出ていく。まぁ、ふぁーすとさんは来客だし、・・・・厄介だ。






「貴女も出てって下さい。着替えるので」

「だめ?」

「だめです」














着替え終えるて下の階へ降りる。何気無くフィーネさんを見るとにっこりと笑ってくれた。
何だか、ホッとする。

それに比べて彼女は・・・・。





「あっ、そうだ!私ね、ジェイの為に料理してきたのっ」

「そうなの?」

「ぼくはフィーネさんので充分ですけど」

「ジェイは私のも食べなきゃダメなのっ」



強引な口振りに嫌気が指し思わずため息が出た。
その間にも彼女はお弁当箱のようなものを取りだしぼくに渡す。


仕方なくそれを開けると、





「・・・・」

「えへへ、お料理なんてした事無かったんだけど意外と上手に、」
「これは何ですか」

「何って、シチューだよ?」



これが?この何とも言えない物体が?
大体朝からシチューってチョイスはどうなんだ。




「味見はしましたか?」

「あじみ・・って?」

「・・・・」



ダメだ。絶対に食べてはいけないと脳が言っている。
こんな物を食べた後、ぼくはどうなるんだ。





「要りません」

「え?」

「こんな得体の知れないもの、食べれるわけ無いでしょう」

「ジェイさん、」

「ぼくはフィーネさんので充分なんで」



彼女にお弁当箱を押し付け返すと、彼女はショックからか顔を背ける。

そしてこちらを見て、





「そっか!ジェイはシチューの気分じゃないんだねっ」

「は?」

「あはは、リサーチ不足だったや」



何を笑って・・・。ショックを受けてたんじゃ・・・・。

けれど彼女は笑顔のまま。






「フィーネの料理美味しいね」

「え・・、ありがとう」



ぼくは少し呆れてしまい、フィーネさんの料理を口に運ぶ。




その日彼女は笑顔を絶やさなかった。
彼女は帰り際、ぼくに問いかける。





「ジェイ、私まだ住めない?」

「だめです」



毎日毎日この時に言ってくる。同じ質問と、同じ答え。
彼女の隣にいるピッポはがっくりと項垂れてる。

彼女は嫌になら無いのだろうか。




「そっか・・、。ジェイ」

「何ですか?」

「また明日っ」



扉がしまる。ぼくはただ黙って扉を眺める。
この会話、始めの内は彼女も疑問を抱いたような表情をしていた筈なのに、近頃は清々しい程の笑顔だ。

辛くはないのだろうか、それとも慣れてしまったのだろうか。


ぼくの中で何かが引っ掛かっていた。





「ジェイさん、」

「どうかしましたか?」

「私を見捨てないでね?」




これは果たして、恋なんだろうか。






20121119






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