同居人とワタシ 08
「今日からバイトなんだっけ?」
「はい」
ジェイ君はバイトが今日から始まるらしく、夕飯どうしましょうか、って訊いてきた。
「私も今日バイトだしな。どっかで食べて帰るとか、」
「今日は作らないんですか?」
「バイトの日は物凄く適当なんだよ」
それこそ缶詰めとかレトルト物とか。ジェイ君が居なかった時はね。
来てからは味噌汁とかバイトの後でも作るようにはしてるけど、今日は遅番だ。たぶんセネルとお店を閉めるまでがバイトだ。いつもは早めの時間で上がれるけど、稀に今日みたいなこともある。
だから帰って作るにしては時間が遅いし、疲れるだけで。
「貴女の料理で構いません」
「うん、・・て、は?」
「今日は別に美味しいものを食べたいという気分ではないので、貴女ので十分です」
「・・・・」
左様ですか、そうですか。
下校の時間になり、ノーマと門の所で鉢合わせた。
「おーあだなじゃん。これからバイト?」
「うん」
そう返事をしたら、一緒に帰ろうと思ったのに、と項垂れては私をじとっと見てきた。
そんな目をされたからってバイトのシフトが変わるわけない。笑いながら手を振りノーマと別れる。
バイト先に着いて着替えを済ませてホールに入るとセネルが険しい顔をしていた。どうしたんだと思って話しかける。
「セネル?」
「おい、どういう事だ」
「え?…っ!」
指を指された先にあったものは、
「お待たせしました。ミックスサンドです」
ジェイ君の・・姿。
「え、えっ!?」
「知らなかったのか?」
「うん、」
バイトするとは聞いてたけどまさかここだなんて思いもしなかった。うん、するはずないじゃん。
「父さんが今日から新人が来るとか言ってが、あいつとはな」
「・・・・」
「それでお前はレジ締めまで居るんだろ?」
「セネルもでしょ?」
「俺は九時までだ」
はい?ちょっと待って。ここのレジ締めって社員じゃないと一人でやっちゃダメなんじゃ・・。
「その代わり、あいつが最後まで居るんだと」
「え、」
「要はお前が新人に色々教える係りってことだ」
セネルのお父さんはいったい何を考えてるのよ。私はここで働き出して・・、・・・・。
一年以上だから新人の面倒を見るのはある意味当たり前だけどもっ。
「あ、ふぁーすとさん。やっと来、」
「ちょっと・・・!」
彼を引き寄せて耳元で話す。因みに隣には納得のいかないような顔をするセネルが嫌そう視線を間隣にも関わらずグサグサと飛ばしてきてる。
「どうしてここに、」
「どうしてって、バイトですから」
「いや、まあ、そうなんだけど。そうじゃなくてっ」
「前一度来た時に窓に貼ってあったバイト募集のチラシを見たからです」
ニコニコしながら話してくれるのは良いんだけど、セネルと仲良くなれそうもないのに何で態々ここなの。
「おい、客だ新入り」
「ジェイです」
「いいからさっさと接客してこい新入り」
「ですからジェイです。貴方の記憶力は乏しいんですか?」
「あーはいはいジェイ君っ?まだ接客解んないのかなっ!?私が教えてあげるねっ」
二人でなんという険悪な空気を作り上げてくれるんだっ。
もうどういうイジメ?イジメだったら質悪いよ、私本当に涙目だよっ
それから三時間が過ぎ、セネルが上がる。これで少しは空気がよくなるかな。
「なぁ先輩。夕飯はどうするんだ?俺ん家店の間隣だし食ってくか?」
「ううん、今日はいいや」
そしてありがとうと感謝を込めて言おうとした、時だった。
「今日はふぁーすとさんの手料理を帰ってから二人で食べるんで」
「ジェイ君?!」
「新入り・・・・お前なっ」
「ジェイです」
何故か不機嫌になるセネルを煽るような態度を見せているジェイ君。
もう、何て言うか・・。
「仲良くしてよ・・」
20121112
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