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同居人とワタシ 07









「おはよ、ふぁーすと」

「おはよう。なんか元気ないね」



そりゃそうでしょ、と当然のように発言した友人。月曜は地獄の始まりだの言って私の前の席に溜め息を吐きながら腰掛けた。

確かに月曜は週の始めだから憂鬱になりやすいけど、私は至って普通だ。





「そう言ってたらもっと辛くなるんじゃないの?」

「言わせてよっ。考えたらもう口に出ちゃうんだからさ」

「単純な口だね」

「ふぁーすと、酷い」




そう言えばお茶を買いたいんだったな。売店前の自販機まで行ってこよ。

ついでに目の前でずーんとなってる友人の分も買っておこう。


教室から出て自販機に足を運んだ。小銭を入れて二本お茶を買って教室に戻ろうとしたら、セネルと鉢合わせした。

前の事もあって少し気まずそうに二人して立ち止まっては黙り込む。




「・・・邪魔だ。いつまで突っ立ってんだよ」

「あ、ごめん」



いつも通りに言葉を発したセネルを目で追いながら謝った。

ガタンと音を言わせた自販機からセネルがスポーツ飲料を取り出しながら、口を開いた。





「先輩」

「うん、」

「・・今日、バイトだから遅刻すんなよ」

「解ってるよっ、相変わらずお節介なんだから」

「ははは、んじゃ俺は行くから」



もっと重い空気になるかと思ってた。下手をすればお互い挨拶も無しに。
けど、そんな事もなくセネルはいつも通り接してくれたから変に安心しちゃった。


あの時のセネルは何であんなに怒っていたんだろうか。階段を一段一段登りながら考えてみた。

・・・考えてみたものの何も解らずもう教室だ。


気掛かりになっているのはきっと私だけだったんだ。セネルだって普通だったし、変に難しく考えてたのはきっと私だけ。






「ふぁーすとっ」



急に呼ばれて何かと思えば手招きしている友人。




「なぁにぼけーっとしてるのよっ、先生が入れなくて困ってるわよ」

「へ?」



慌てて振り向くと、先生が立ってた、真後ろに。

そうだ、私教室の扉の前で棒のように立ってたんだった。





「すすすみませんっ」

「いいから早く席につけ」

「はい・・」















昼休みになって食堂で食べる事にした私達は列に並んでお金の準備をしていた。そしたら誤って百円を落とし慌てながら屈んで拾おうとした時、





「ほら」

「え?あ・・ありがとうっ」




私より先に拾ってくれた金髪君。誰だろ、あまり見ない顔だし同学年じゃないよね?

拾ってくれた男子は別の列に並びに行ったからすぐに姿を消した。




「ふぁーすと、惚れた?」

「へっ、は?!」



ニヤニヤしている友人の聞き慣れない言葉につい動揺してしまったら、真に受けてやっぱりー、なんて口にする。
正直惚れてはいない。カッコいいとは思ったけど。

そんな時校内放送で友人が呼び出された。





「ちょっと何したの?」

「私何も知らないっ!宿題忘れてふぁーすとの写してるとこ先生に見られたなんて知らないんだから!!」

「・・・・」



本当に単純な口らしい。それにしてもいつ私の宿題を見たんだろう。あ、今朝お茶買いに行ったときかな?

列から離れて急いで職員室に向かっていく友人の背中を哀れんで見つめ続けた。


料理を注文してトレイに乗せた私は空いてるテーブルに座る。

今日はカレーにしてみた。学食のカレー美味しんだよね。
手を合わせてからスプーンを持つとカレーに横から影がかかる。

何気無く隣をみるとジェイ君が立っていた。




「一人食堂で昼食とは、寂しい人ですね」

「これには訳が、」

「言い訳は見苦しいですよ?ふぁーすとさん」

「う、・・。そ、そう言うジェイ君だって一人なんじゃない?」

「ぼくはたった今生徒会の仕事が終わってこれから食事なので嫌でも一人なんですよ」




くそうっ・・何かあると生徒会生徒会って。一睨みしてから視線をカレーに戻し、構わずカレーを口に運ぶ。





「だいたいジェイ君は何でそんな言い方しか出来ないかなー。そぇらからかあいうないにょよ・・」

「口に物を入れたまま喋るな」

「はいはい・・・って、ん?」




返ってきた声は決してジェイ君のものじゃなかった。

向かい側を見てみるとさっきの金髪くんがさりげなく座ってる。うん、ジェイ君、貴方いなくなってたのね。なのに私はベラベラとっ・・・。





「相席させてもらう。文句はないな?」

「あ、うんどうぞ」




君のその上からの発言なら私に許可を取るまでもないと思うよ。断っても座ってたんでしょ。






「・・えとー、さっきはありがとう。お金拾ってくれて」

「別に構わん。当然のことだろ」

「うん、ですよね」




なんだ、また厄介そうな。ジェイ君といいこの子といい、この学校は特殊な子が集まってるの?

だとすると早く卒業したい。





「そう言えば、君、三年?どのクラス?」

「お前は三年だろ?俺は二年だ」

「そ、そーデスカ」



それなのに堂々とため口なのね。私を三年だと知っての仕打ちなのね。私はどんだけ見下されてるんだ。それこそジェイ君といいこの子とい、





「ふぁーすと、カレーが付いているぞ」

「あっ、ありがとう教えてくれ、て・・・・って名前」

「ああ、勘だ」

「・・・・・・」



いやいやいや勘て貴方超能力者じゃあるまいしそんなどんぴしゃで当てれるもんじゃないよ、人の名前は。

スプーンを置いて来たばかりなのに既にあと三口くらいで完食の彼へと顔をあげた。





「貴方は?名前」

「名乗る必要ない」

「フェアじゃないじゃないこんなの。教えてよ」

「ふん、・・ワルターだ」

「わるたぁ?」

「ああ。それじゃあ俺はもう席を外す。邪魔したな」




そう言った彼は自分のトレイを片手で持ち上げて立ち上がった。するとてをいきなり私の頬に添えて親指で口のすぐ隣で擦らせた。





「今度はご飯粒、付いてるぞ」

「へっ、んむっ・・」




親指に付いたご飯粒を見せてきたかと思いきや、私の口に押し当てて去っていった。

何が起きたのか理解できずに暫く放心状態で座っていたら、周りが私を見て(さっきの出来事を見て?)きゃー、だとか、バカップルだとか騒いでるのに気付いて、一気に身体中熱が走り俯いた。


普通に考えれば有り得ない事態だっ・・。彼は、ワルター君は何を考えて。





「何だったのよーっ・・・」

「何だったんでしょうね」




返ってくる筈のない返事に慌てて顔を上げると今度はジェイ君が座ってる。いつも張り付けてる笑顔も無しに。





「恋人ですか?」

「ちっ、違うから!さっき知り合ったばかりなのにっ」

「ふーん。どうでも良いですけど」



何だろう。何か今のジェイ君、





「ジェイ君、怒ってる?」

「は?どうしてです?」

「何だか怖いよ?今のジェイ君。笑顔じゃないし」

「ぼくはいつも笑ってる訳じゃないですよ」



それもそうだけど。それ以上口にするとジェイ君の機嫌を損ねそうだからやめた。







20121009






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