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まい・でぃあー 05









一晩明けてあたしは隣のあだなの部屋に来て、2人ベッドに腰かけてただぼーってしてたんだけど、あだな沈黙を崩した。






「ノーマちゃん」

「んー?」

「ジェイ来ない」

「あー、」

「ジェイは?」




まるでデリバリーした物が来ないかの物言いで窓から街の外に通じる橋をじっと見つめるあだなは、まるで飼い主をまだかまだかと待つペット状態。


昨日は明日ね、って言っちゃったあたしもいけないんだけど、どうしたもんか。






「ノーマちゃん・・」

「う、うん」

「ジェイ」

「・・・えっと、」

「・・ジェイ」

「・・・、はぁ」




仕方ない、呼びに行くしかなさそうだね。あたしもお人好しだなー、うん。

よしっ、と意気込んで腰をあげるとあだなもそんなあたしをきょとんと目で追いかけてた。





「あたしラッコんとこ行ってくるよ」

「!、私も行くっ」

「あだなは留守番」

「・・なんで?」

「モフモフ、だよ〜?」




あたしの一言で顔が青ざめるあだなは固まったように何も言わない。

あそこへ行ったらあだな倒れかねないからね。留守番してもらった方が安心だわ。





「だからジェージェーの事はあだなの友達であるこのノーマ様に任せてあだなは街の観光でもしてなって!」

「ノーマ、さま・・?」


















そして一人ラッコんとこ来たんだけど、




「ジェイなら仕事とかで居ないキュ」

「ちょ、冗談でしょーっ?!」



最悪な事にジェージェーは留守だった。





「どうすんのさっ!ジェージェー連れて戻んないとあだなの病気が再発しちゃうじゃんかっ!」

「そう言われてもジェイは調査に行ってくるとだけ言って出ていったんだキュ。行き先までは、」

「そこをなんとか!じゃないと可哀想じゃんっ」



主にあたしがっ!!!

ジェージェー居ないまま帰ればまたあだなとの無意味な問答延々とやることになる。

もうそれは予想が付いてるからさっ、意外と拷問だよあれっ!




「ねっ、ほんっとに、もうまじでジェージェーを出してよっ」

「無理言うなキュ」




言葉をバッサリと切り捨てられて脳裏にあだなの何とも言えない顔が過って疲労感がどっとくる。

ジェージェーを求めてジェイはジェイはと訊いてくるその姿はもう子どもだよ。





「どうしたんだキュ?」

「ピッポ、それがノーマさんがジェイを連れていかないと殺されるらしいんだキュ」




いや、キュっちん。あたしそんな物騒な事言ってない筈なんだけどな。

うん、言ってないよね。






「それは大変だキュっ。誰に殺されるんだキュ?」

「あのさ、あだなはそんな子じゃないん、」

「ふぁーすとさんだキュ」

「へ・・・・ふぁーすとさんキュ?」



一瞬動きが止まった次男坊があだなの名前を口にした途端、早足であたしの足元まで来る。





「ふぁーすとさんは?元気かキュ?」

「え?あー、元気、だよ一応」



何でこんなに目が輝いてんのこのラッコ。そう思いつつも、ジェージェー病のあだなを浮かべながら返事を返したら、くわっと顔を怒りに染めた。






「一応?一応ってなんだキュ!ふぁーすとさんが風邪でも引いたらどう責任取るんだキュっ」

「ちょっ、ちょっと待ってよ!大袈裟だってっ」

「ノーマさん、ふぁーすとさんを病気にしたら許さないキュっ」

「あたしゃ何かの病原菌かっ」




可愛い目で睨んだって効果無いっての、残念でしたーっ。

そもそもこのラッコ、どうしてそんなに心配して・・・







「ピッポ、そんなに気になるならふぁーすとさんの所へ行ってくるキュ」

「ほんとかキュ?」

「ノーマさん、ジェイの代わりと言っては何だけどピッポを連れていけばいいキュ」




すっごくナイスアイデアみたいなポーズとってくれてるのは有り難いんだけどさ(何が有り難いのか解んないけど)、・・あだなはさ、アレなんだよね。







「あだなは動物苦手だからよした方が良いって」

「大丈夫キュっ。モフモフと仲良くなれればここに住めるってジェイとふぁーすとさんが話してるの聞いたキュ」




ははーん、そんでアンタがあだなに会って克服させるってか。




「絶対無理だ・・」

「成せばなる!だキュっ」




もう勝手にすればいい。ジェージェーが居ないならあたしには帰るしか選択肢はないわけだし。

悪いけど探しに行くなんて面倒じゃん。

うん、一人で帰ろう。




















「きゃあぁぁあっ」




結局ぴっちんも宿屋まで付いてきた。
やっぱりこうなるよね。

逃げようとしたのかあだなはベッドの上で手と足を広げ壁に背中をぶつける勢いで後ずさってた。

挙動不審な目であたしを見てはがくがく震えながら口を開いた。





「やだやだノーマちゃんっ」

「ふぁーすとさんこんにちは。ピッポだキュ」




そんなの知らないと泣きながら混乱してるあだなと、平然と暢気に挨拶するラッコを見て思った。

なんだこの会話の温度差は。





「ノーマちゃん助けてぇ!」

「ラッコ〜、やっぱ嫌がってるし帰れば?」

「嫌だキュっ。ふぁーすとさんにモフモフ族を好きになってもらって一緒に暮らしてそして・・、」

「うん」

「ピッポとランデヴーだキュ!」

「・・・・・」




本当の目的はそれか。なんて下心見え見えな・・・。

パニクってラッコの話なんて聞いてないあだなを見つつも色々思考を巡らせて、たどり着いた私の感想の言葉は"面白そう"の一言。

下手したらジェージェーとラッコとあだなの三角関係出来上がりじゃん、とニヤけながら一人と一匹を交互に見た。





「あだな、ラッコと仲良く出来たらジェージェーと暮らせるんでしょ?」

「そそそそうだけど助けてっ」

「ならここは素直に克服しちゃおーよー」

「無理っいやっ怖いっ」




埒が明かないなー、全く。

仕方なくラッコに抱きついて動けないようにしてからあだなに笑いかける。





「ほら全然怖くないでしょ」

「こっち来ないでよ・・・?」

「・・・・。そんなに嫌いかキュ?」




突然の悲しそうな声に、あたしもあだなも目を丸くして驚く。
勿論あたしとあだなの声じゃなくて、ラッコの声。






「ふぁーすとさんは仲良くしてくれないキュ?」

「そ・・言われても、」

「ねねあだな、あたしも協力すんだし、少しずつ慣れてこーよ」





不安げなあだなはゆっくりと頷いては呟くようにラッコに謝ってた。







20120928





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