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闇を感じた





「ザビーダ、寒くない?それ」

「なになに?ふぁーすとちゃん。この男らしい体に惚れちゃったとか?」

「うっははー、それはないよーっ」

「なにをーうっこのー!」

「いだだだ、ごめんってあははっ」



ザビーダとこうやってふざけている私をみんなは、微笑ましく見ている。けれど約一名はそうじゃないみたい。

ザビーダの腕を抜け出してそいつに詰め寄った。



「ミっクリオー」

「なに?僕に何か用なのか?」

「べつに?それより昔みたいに駆けっこする?浮かない顔のミクリオは息抜きをするべきだと勝手ながら判断したのでありますっ」

「駆けっこって。君はいくつだよ。ふざけるな」



最近私に対する当たりがキツイ気がするけど、気のせいだよね。




「ふざけてないよー、もう」

「なら勝手にやってろ」

「ありゃりゃーイケズー」

「いつもヘラヘラして鬱陶しいんだよ、ほんと」


あれれ、…やっぱり冷たい?ハテナだらけの私の頭は上手く状況が飲み込めていないようだ。



「ミボ、こっちへいらっしゃい」

「はいはい、お嬢様」

「ちょっとーっかけっこ、…行っちゃった」






どうやら私は、幼馴染に嫌われてしまったようです。心当たりはないし、何もしていないはずだけど、…。それでも私は好きなんだけどな。例えミクリオが変わっても。


















「ほらほらいくよー、デモンズランス!」




戦闘中、私とエドナが後方を守っていた。けれどエドナは体力を随分と削られているようだ。



「あはは、この敵の量はちょっとヤバイかも」

「笑ってないで戦いなさいよっ…そんなだとミボが離れていくわよ」

「え…」



詠唱の途中だったが止めてしまった。




「ぐあっ…!!」

「ふぁーすと!」



あれ、空が凄く近い気がする。そっか、敵の攻撃くらっちゃんたんだねー、私ってばおドジさん。こんなだと、迷惑だろうな、いつもヘラヘラして、おちゃらけてて…。大丈夫、もうやめる。やめるよ。旅を、みんなと居るの、…ミクリオを好きでいるの。

エドナの声を最後に私は目をそっと閉じた。













『いつも泣いてるね』

『うぐ…ミ、クリオ?』

『ふぁーすとは笑ってた方が可愛いよ』

『ふぇ…、う、ん…ありがと、』


       ――鬱陶しいんだよ







「!!!!」



あれれ、生きてる。ここって…。
どっかの宿屋だろうか…。




「お!起きたな〜ふぁーすと!元気そうじゃん!」

「ロゼ…私」

「え?ちょっとっ?何で泣いてんのっ?どっか痛いとか?」

「うはは、私が泣くはず…ないじゃない…あはは」



その後ロゼは、何も触れずに退室してくれた。泣くのはあの時ぶりだ。さっきまで見ていた懐かしい懐かしい夢。
いつも泣いていた私。ちょっとした事でも泣いていた私。そんな私にミクリオは…。



「…ううん、やめよ」




乾いた笑いが漏れた。所詮私は、この程度。旅だって、ミクリオが同行するから着いてきただけの話。今思うと理由が不純だよね。だから尤もらしい理由を並べてスレイを騙してきたようなもの。



「こんなんで導師様一行の一員なんて…バカみたい」

「ふぁーすと?入るよ」




声からしてスレイだろうか。丁度いいや。にっこりと微笑みながらスレイを見る。



「良かった。気分はどう?」

「あちこち痛いかな。…ねえスレイ」

「ん?」

「私をね、…置いていって」



やっぱり驚くよね。何で急に、なんて思っちゃうよね。




「私、まだ体痛いし…それにもう、」

「旅するのが嫌になった?」

「嫌に、なった」



そう笑いながらいったら、スレイの穏やかな目が鋭くとがる。



「そんなに簡単な事なのか?旅をやめるの。覚悟して旅に着いて来たんじゃなかったのか?」

「私、怖がりだし、弱いか、…っ!」



がたんとイスが倒れた。スレイが勢いよく立ち上がったからだ。





「解った。ここまでありがとうふぁーすと」

「こちら…こそ」















宿屋を出れば、スレイたちはもう居なくなってた。最後に顔も見せてはくれないんだね。ホント私って…。

こうなったらイズチに…。




「…だめ。帰る資格なんてない」




帰るところなんて、私にはない。憑魔になった方がいっそ楽?それともドラゴン…。





「天族の娘よ、…随分と悩んでいるようだな」






私の耳に、幼い少女の囁きが聞こえたような気がした。










20150219

続けようか悩む><








あきゅろす。
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