旅路
※ED後・ネタバレ注意
「わっ」
足場の悪い遺跡の中、躓いた私を支えてくれたミクリオ。旅続きで少し痛んでいる髪を靡かせて、ふうと安堵の息を吐いていた。
「大丈夫か?」
「ええ、大丈夫。ありがとうね」
二人で微笑みあってから遺跡の出口を目指す。
「今日はどうする?」
「寝床の事か?」
「そ」
どれ程の時が経っただろう。成長が極端に遅い天族の私達もすっかり大人びてしまった。何代もの世を見てきた気もするし。いつか古い古い仲間が語っていた遺跡等の探検を、今は二人で旅をしながら黙々とやっている。
遺跡や時代を感じるものには疎い私だ。昔の友人には劣るだろう。けれど、こういうものが好きなミクリオは退屈をしていないように見えた。そして必ず私に言う。「あいつには及ばないが、何も知らないよりずっと良いよ」と。
「ミクリオ」
「なんだ?」
「私、私ね…、この旅が愛おしいよ」
そう言ったのは初めてだった。長い長い旅をしていて初めてだったんだ。だからだろうか、彼は驚いたように目を見開いていた。
「意外だった。ふぁーすとがそんな事言うなんて」
「意外って。侵害だわ」
「だっていつも文句言ってたじゃないか」
「いつでも、はいそーですかーなんて素直に言う事聞く訳がないでしょ」
笑いながら彼に悪戯な笑顔を向ければ、彼もふっと笑って私の手を握る。
「ふふふ」
「今度は何だよ」
「こんな私達を彼が見たらどう思うかなって」
「どうだろうな。洗いざらい質問されそうだけど」
それもそうだと噴出してしまった。そうだろうな。驚きながら「いつからそんな関係に?!」なんて言ってきそう。
「そういえばあの頃、彼のこと好きだったな」
「え…」
「いつでも優しくてたまにおっちょこちょいで…でも真っ直ぐで」
「なるほど、ね」
彼を懐かしみながら話していたら、足を止めた彼を見つめると何だか納得のいかないような顔をしていた。そしていきなり暗い遺跡の壁に追いやられてしまった。
「あれ、…怒らせちゃ…ってる?」
「君がいけない」
「何かしちゃった?」
「黙ってろ」
肩を掴まれ、少し強引な口づけをされた。強引なものは慣れていなかった私は、顔が熱くなるのを感じて思わず俯いてそんな顔を隠すみたいに彼の胸に顔を埋める。
「何なのよー…急に」
「あいつがこんな僕達を見たらなんて言うんだろうな」
「〜〜〜っ、このエロリオ!」
「は?!」
急ぎ足で一人、遺跡の出口を目指してやった。
「いつまで口を利いてくれないんだ?」
「……(つーん)」
「ふぁーすと、いい加減に」
「今わかった。エロリオは女々しかったね。メメリオめ」
「どっちにしても酷いぞっ?」
20150211
ミクリオ大好きだ!
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