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「俺、ふぁーすとが好きだ」

「え…と、ありがとう」



そして少し逃げ腰の私の両頬を包んで半分強引にキスしてきた。…と思うんだけど。





「どう思う?」

「どうって、何がですか」

「どういう意味だと思う?」

「そのままじゃないですか。キスしてきたって事はふぁーすとさんの事が好きだったんでしょ、その人」



何よその如何にも興味ありませんみたいな反応は。ジェイってはイケズー。けど何だかジェイ怒ってない?普段は私に対してさん付けなんてしないのに。




「ジェイ、怒ってる?」

「なんで」

「さん付けだったから」

「…ふぁーすと」

「え」

「これでぼくは怒ってません」





何だその屁理屈は。そういう事じゃないよね?そういう言い方する時点で可笑しいよ。何よ、反抗期か。




「ねえ、何かあったの?」

「たった今までぼくをこうした出来事は起こっていましたよ」

「たった、今?」

「…」



あ、今すごい溜め息した、わざとらしい溜め息した。余計にわけが解らない。そんな風にジェイを見ていたら顔を上げて私の両頬をぐっと両手で挟んできた。…うん、地味に痛い。



「あにょ…いひゃいよ、ヒェイ」

「ヒェイって誰ですか、ぼくはジェイです」

「わはってゆんらけど…はべれまへん」


解ってるんだけどしゃべれませんって言ったけど伝わったかな。ジェイがゴミを見るような目で見てくるから私もされるがまま死んだような目で見つめ返した。



「こうされてキスですか」



こんなに強くはさまれた記憶は全くもってないんだけど。



「さっきの話」

「はひ」

「恋人にする話ですか」

「…」



あ、やきもちだ。なんて口が裂けてもいえない。後が怖いから。…今の状態だと裂ける口もありませんが。

でもね、だけどね、



「夢だお」

「だおとか言うな鬱陶しい」


いやいや、ならせめてこの手を離してよ。しかも何でリアルトーンな喋りなの。怖いよ。



「夢だろうがなんだろうが、そんな話されても困るんですよ」

「へも、」

「でもじゃない」


もう普通に私の言葉変換してくれちゃってるよ。私の手はぺしぺしとジェイの手を叩くけど離す気配が無い。ジェイは怒ると怖い。…と思う。
だって今にも人を殺しそうな目をしてるもの、眼力と手の力で殺してきそうだもの。


「そんな夢見て、他に好きな人が居るんじゃないんですか」

「ん〜〜っ…っぷは!」


もうやだ。何言ってんのこの人。自力で何とか手を振り払ってジェイを睨む。



「ジェイ以外に好きな人なんて居ないよ。夢だし、知らない人だし」

「別の人と付き合ってみたいとかじゃないんですか?」

「もうっ、何でそう思うの?」

「ならどうしてぼくという恋人が居るって言って拒まなかったんですか」


…なに、このかわいい生き物。

夢だよ?夢ですよ?夢ってほら、ちょっと現実からずれた感じでその時その時で人間関係とか登場人物とか変わるもんだし違うもんだし、ジェイはあの夢には登場しなかったし。
ちょっと拗ねたジェイはこれほどまでに幼稚な事を言うんだね。それなら私だって、



「夢って現実の影響を受けてるらしいけど」

「はい」

「夢で私のふわふわした意識の中でジェイが出てこなかったのは、現実でもジェイが私に大した事してないって事なんじゃないの?」

「え…」

「それにジェイだってそんなに言うんだったら夢に出てきて助けてよ」

「他人の夢にどうやって、」



ふふふ、今度はジェイが困る番だ。ざまあみやがれ。ニヤニヤしそうな顔を必死に堪えて私も拗ねたようにもじもじしてみる。


「ねえ、ジェイ」

「…貴女、言いましたよね?ぼくが大した事してないって。その夢の中の男を越えればいい話なんでしょう」

「は?、え?」



今度はそっと両頬包んできた。そして、



「んうっ?!」

「…ふぁーすと、静かに」

「ジェ…イ…」



繰り返されるキスの嵐に、私がどうかなりそうだ。もうなんだかずるいよ、こんな時に男の顔して冷静な口調で名前呼んできて。


「ふぁーすと…、…好きだ」

「〜〜〜っ」


駄目です、私の負けですジェイさん。もう照れて照れてどうかなってしまいそうです。いや、もうどうかなってるかもしれない。


「は、…ふぁーすと」


気づけば押し倒されててキス続行。…そろそろ、そろそろいいでしょ。キスで殺す気かこの人。



「んはっ、長いっ」

「目が潤んでますね。ちょっとやりすぎたかな?それとも、」


キス以上のコト、してあげましょうか?、なんて言うもんだから心臓が止まるかと思った。勿論一通りのコトはやってるけど、けど…これでドキドキしない方がおかしい。…と思いませんか?



「もう急に何なの!」

「こんなキスじゃなかったでしょ?夢の男は」

「え」

「これでぼくもふぁーすとの夢に出る確率はぐんと上がったとみます」



にやりと笑って私の上からどいたジェイは自分の唇を一瞬舐めた。



「ジェイのやきもち妬き」

「お好きにどーぞ」





僕を見てと訴える

「おはようジェイ」
「おはようございます、ところで夢は如何でした?」
「…(めちゃくちゃ甘えてくるジェイが出てきたなんて言えない)」





20140915

これ、最近夢で見てびっくりしました。あはは←
別に、決して、欲求不満とかじゃないです。
まあそれで恋人に言ったらどうなるかなって思って書いてみました。





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