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翻弄







保安官に勤めて数年。こんな真夜中に私は街のパトロールをしていた。

噴水広場を通りかかって話し声が聞こえてきた。声からして若い女性と・・女性?
でもよく聞く声な気もする。

ここ最近黒い霧騒動も収まり、平和になったと言っても過言じゃないが、何が起こるか解らない。
盗賊なんかが出るかもしれない。

なら若い女性はこんな時間に出歩かない方が懸命だ。


スルーする事も出来るが、仕事なのだから致し方あるまいと明かりを広場に向けて家に戻るように促しに行く事にした。





「おい、そこの連中。今何時だと思っているんだ。さっさと、」

「おっ、あだなじゃん」

「ノーマ?それにウィル・・・・、あとジェイ」

「ぼくはついでのような言い方ですね」




そこにはいつか旅を共にした、中間・・というより、私は短い期間手助け程度にしか参加をしていないが。





「パトロール中か?」

「ああ」

「暗い中ご苦労。だがすまなかったな。こんな時間に仕事を増やしたみたいで」

「夜のパトロールは私の仕事だ。気にする事はない。で、何をしていたのだ?」




疑問をぶつけるとジェイは溜め息を吐き、ノーマが少し呆れたように説明を始めてくれた。






「それがさー聞いてよー。さっきまでここで酒に潰れてた奴がいてさ、無駄にあたしらに絡んできたの。本当に迷惑な話じゃん。・・・・・・ねー、おっさん」

「・・・・」




ん?ウィルがおっさんと言われているのに珍しく拳骨が落ちない。

・・・・話の流れで何と無く嫌な予想が浮かぶ。





「ウィル、まさかお前」

「悪い、・・つい」

「まったく。酒を飲むのは良いが、限度と言うものをいい加減、」

「解ってるっ、説教は勘弁してくれ」




私も呆れてしまった。約一回り年上の保安官がこれだと先が思いやられる。仮にも私の上司だろう。





「悪かった・・」

「ん?」

「全部声に出てましたよ」

「ああ、そうか。それはすまない」

「ねー保安官ってみーんなそんな堅いしゃべり方すんの?」




私は元々だ。ウィルも似たような口調をしているが、関係は皆無だ。





「そんな事より帰ってはどうだ?宿屋の店主やハリエットが心配しているのではないか?」

「だねー。宿屋の店主は困ってるが正解だよ。ほらウィルっち!帰るよっ」

「ああ・・」




若干ふらついた歩きを見せるウィルをノーマが支えて噴水広場から姿を消した。あの様子だとウィルを送ってくれるだろう。






「で、貴様は何をしている?ジェイ」

「いえ、こんな遅い時間に女性を一人は危険だと思いまして」

「貴様といる方が危険な気がしてならない。さっさとモフ何たら村へ帰れ」

「モフモフ族の村です。自棄にぼくを目の敵にするんですね」




詰め寄ってくる問題少年に合わせて一歩下がる。いつも何を考えているのか解らないこいつは天敵そのものだった。

初めて会った時に私を黙ったまま睨んだ挙げ句、自分は自己紹介せずに話を進めた。
それからというもの、いきなり叩こうと言うのか頭に手を乗せてきたり、手を捻るつもりなのか握ってきたりおかしな行動をする。


更には、"鈍感 " と何となく呆れていてバカにするように言われた。

いったいなんだと言うんだ。





「いいから帰れ。私は仕事が残っているんだ」

「パトロールでしょう?」

「見ての通りだ。町を豊かにするために業務をこなしているのに貴様のような問題児がいるといつまで経っても終わらない」

「ぼくもお供させてください」

「断る」




するとガッと腕を掴んできた。今度は何だと言うんだ。






「あのね、ぼくは本気で心配してるんです」

「戯けたことを」

「貴女がなぜぼくに対して威嚇的なのかは解りませんけど心配してるんです」

「威嚇的なのはお前が攻撃してくるからだ」




そう言えば目を見開き、…そうだな・・、ぽかん、と言った効果音が似合う顔をする。

その顔はすぐに呆れ顔に変わって口を開いた。





「いったい、いつ、どのようにして貴女に攻撃したって言うんですか」

「初対面で睨みを効かせ威嚇してきたり」

「・・・・」

「いきなり頭を掴んで殴ろうとしたり」

「・・他には?」

「手をへし折ろうとして触れてきた・・・・り、」




段々ジェイの表情が怖くなっていくのに気付き掴まれてる腕を振り払おうとした。が、中々離そうとしない。





「貴女、余程抜けてるところがありますね。いや鈍感」

「勝手なことを言うな。事実を言ったまでだ」




全くどこまで失礼な奴なのだ。
私にいったい何の恨みがあると言うんだろうか。

もう話していても埒が明かない。こんな奴放ってパトロールを続けた方が利口だろう。

踵を返そうとした時だった。
いきなり唇を合わせてきたのだ。彼が離れてもしばらく放心状態だったが、理解したと共に顔が日照る。






「き、貴様っ、今何を…!」

「さあ、これを鈍感な貴女はどう捉えるんですか?」




心臓が煩い。バクバクと煩すぎるっ…。ジェイは真剣に私と向き合っていて、…それで・・。

と言うことは今までのも好意がある故の行動だったと言うことなの…だろう、たぶん。




「もう解りましたよね?ぼくの気持ち」

「・・・・っ・・」




私のこの感情は
これからどうなるんだ?

「返事はいつでもいいので」
「そ、そんなものないっ!あってたまるか!」
「そう言わず。ぼくヤサシイですよ?」
「胡散臭いぞっ」







20121203

これからも振り回されるであろうヒロインちゃん。







あきゅろす。
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