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信じる事







私は貰ってないな、指輪。

ついさっきレイア達と分史世界から戻ってきて皆が街で自由行動をしているのにも関わらず、私は雨の中フィールドに出て片っ端から魔物を倒していく。

何だか辛くて悔しくて、じっとしてられないから無我夢中で倒しまくる。

あの分史世界は過去。あの時期は既に私が恋人だった。
けれど彼は姿を消した。

きっとアルの一番はプレザだったんだ。例え私が今の恋人で彼の理解者だとしても、プレザに敵いっこない。
いつも不安になってた事が具体的に、目の前で悟らされた気分だった。

知れて良かった、知りたくなかった。胸にグサグサと何かが突き刺さるようで。これは嫉妬なのか。
自分でも解らない。





「もう、・・・・解らない」



彼の気持ちが、はたまた自分の気持ちが。
彼の特別は、彼の一番は、私でありたかった。最高に最低な我が儘だろう。

バカみたいだ。こんなだから、


一番にはなれないんだ…─



武器が手から滑り落ち、私の瞳から涙が溢れ出す。皆が居なくて良かった。涙なんて見せた事ないもの。





「ふぇ・・っ、」



アル、アルヴィンアルヴィンアルヴィン・・。

怖い、つらい・・・・。





「ふぁーすと!!!」

「アル、ヴィ・・」



目の前でアルが魔物に斬りかかり吹き飛ばす。いつの間にか私は魔物に囲まれていたらしい。
でもどうして、





「アルヴィンが、ここに」

「んな事より構えろっ」

「っ・・う、ん」



床に転がる武器に手を伸ばし、言われた通り構えた。


数分後、魔物は一匹も居らず安心できる状態にはなったけど、私の体力が限界に来たのか意識が一瞬飛んだ。





「ふぁーすとっ、」

「あ、・・大丈夫。ただ戦いすぎただけ」



ふらついた体はアルが支えてくれたけど、私は自力で歩き始めた。




「全く、泣くのはいいけど、本当にお前は勝手だな。急に居なくなって、探しに来たらこれだ」

「・・そう、私は勝手よ」




プレザみたいにはいかない。きっと彼女なら、・・・・。彼と接しているといつもふとした時にそう考えるようになっていた。






「どうせ、私なんて・・」

「ふぁーすと?」

「プレザにはっ・・敵わない・・」



自分で言って悲しくなる。しかも彼を前にして言ったんだ。もう終わりかもしれない。

するといきなり首の後ろに手を回されて、ぐいっと引き寄せられた。




「んぅっ・・・・んん、ん」



深くなっていくそれから今の体力じゃ逃れるなんて不可能で、行き場のない手は彼の服の脇の下を掴む。




「んふ、やんぅ・・・・」

「っは、・・ふぁーすと」

「・・んっ」




止まらない、彼からの口付け。
雨の中私は瞳を開けて彼を見ると彼も瞳を開き切な気に見てきた。

そして目を閉じて涙をまた流し口付けをされたまま気を失った。



















「あっ、ふぁーすと目を覚ましたね」

「・・・・ジュード?」

「ずぶ濡れでアルヴィンが背負ってきたから驚いたよ。アルヴィン呼んでくるからちょっと待ってて」



どうやら宿屋の一室にいるらしい。ここまでアルヴィンが運んでくれたのか。ジュードにも迷惑かけたな。







「目ぇ覚めたんだな」

「うん。ありがと、運んでくれて」

「・・・・・」



目を合わせることもなく私はアルに背を向ける状態で布団を被り眠りに入ろうとした。
けれどそんな事がすんなり出来るわけでもなく、名前を低く呼ばれる。





「どうしてプレザなんだ?」

「べつに・・」

「もしかして分史世界での事か?」



ぴくって反応してしまった。彼は小さくため息を吐けば、指輪か、と呟いている。





「確かにお前にあげてないよな」

「気にしてない」

「はいはい」



彼は布団に包まれている私を布団ごと抱き上げて自分の胸に私を押し付け抱き締めた。





「心配させんな」

「・・・・心配してくれたんだ」



布団を被ってるせいで彼の表情はまるで解らないけど、抱き締めている手に力を込めてくる。





「大馬鹿野郎・・。雨の中お前を見つけたら敵に囲まれてるし、なのにお前は武器を当然のごとく落とすし。死ぬかと思って怖かったんだからな」

「・・そっか」

「そこは謝るところだ」




それもそうだけど、本心か疑ってしまう私はどうかしてる。

いつだって信じてあげたいのに、それが出来ないなんて。





「アルヴィン、別れよう」

「・・は?」



表情の見えないまま彼に告げると、彼の体が固まったのがわかる。
予想なんか出来なかったんだろう。私から別れを告げるなんて。






「なん、で・・何でだよっ・・・」

「ごめんなさい・・アルを信じれなくなって、・・・・自分でも解らない」


何て残酷な事を言ってしまったんだろう。
彼の心拍数が上がってる。密着しているから解る。ならきっと私の動悸も感じてるんだろうな。





「本気か?」

「・・ほん、き・・・・です」

「・・嫌だと言ったら?」

「っ、・・・・嫌じゃないの?アルの気持ちをどこかで疑ってる私をっ」




泣きたくもないのに涙が頬を伝う。体も震えてきた。





「お前だって、・・本当は嫌なんだろ。別れるの」

「何言って、」

「ずっと俺の服を掴んで離さない」

「アルヴィンが抱き締めてるから、」




じゃほら、とアルは私から手を退かし、私は身動きが出来る状態になる。
それなのに、離せない。






「離してみろよ。そんでもって俺を全力で拒んでみろ」

「・・っ、・・・」

「なぁふぁーすと、俺はお前が好きだし、その・・愛してるよ」

「・・・・」

「お前がこうして離さないのは俺を好きだからだろ?」



そう、好きだよ。アル以外なんて考えられないし、嫌いになんてなれやしない。

すると彼は私が頭から被っている布団を捲って顔を除き込んできた。泣き顔を見られたくないから横を向こうとしても彼が顎を掴む。





「こうやって泣いてくれるのも嬉しいよ」

「アル、アルヴィン・・。ごめん、なさい」

「何の謝罪だ?」

「別れたく、ない」



そう言ったら額にキスをして私と目を合わせる。






「一度しか言わねぇからな」

「・・、?」

「ふぁーすとは俺にとって無くてはならない存在だ。プレザとは比べたりしねぇ。確かに愛した存在だけど、今はふぁーすとを愛してる。そしてこれからも」

「アルヴィ、」

「結婚、しよう」




驚いて彼を見ると穏やかでけれど真剣な表情だった。
今まで悩んでいたことが、解消されていくように涙が溢れ出る。





「はい、・・喜んでっ・・・・」



また首をぐいっと引き寄せられてキスをしてくれた。



まだ始まったばかりの
モノガタリ


「指輪、準備しないとな」
「旅が終わってからでもいいよ?」
「そうか?」
「正式な結婚も、」
「それは直ぐにしたい」





20121118



アルヴィンは結構話が浮かびます。アルヴィンと結婚したいです←







あきゅろす。
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