恋
「ルドガーっ」
「ふぁーすと?」
「私の恋人になって!」
「はっ・・!?」
事の発端は約一時間前。旅の途中トリグラフに戻ってそれぞれ自由行動をとってた。
私は久しぶりに同級生に会う約束をしていて大通りで合流。友達と、見知らぬ男と。
「久しぶりねふぁーすとっ」
「ひさ、しぶり。えーと、お隣の方は?」
「私の彼氏よ。ね、ダーリン」
まさかの展開にテンパってたら彼氏さんが私を見て不思議そうに首をかしげた。
「どうかしたの?」
「えっ?ううんっ別にっ・・。ただまさか彼氏と同伴してくるとは思わなくて、」
「あー、そうよね。ふぁーすとには彼氏いないもんね」
「っ、居る。そっちが連れてくるって解ってたら私だって連れてきたっ」
「ふはは、強がらなくても、」
「ほんとなんだからっ。待ってなさいよ」
そして冒頭に戻るのです。もう売り言葉に買い言葉で。
勿論こんな事知らずいきなりの告白を受けたルドガーは困惑した表情を見せてきた。
「頭でも打ったのか?」
「打ってない!っねぇお願い、今日だけで良いのっ」
「はぁ?」
「ルドガぁ・・っ」
私の必死なお願いにルドガーは頬を少し掻き、仕方なさそうに頷いてくれた。
事情を話せば、見栄っ張り、と呆れたように言われたけど、この際何だって良いっ。早く大通りに戻らないと。
「あ、ふぁーすとっ。・・とルドガー君?」
「ど、どーも」
友人カップルを目の前にして、ガッチガチになっているルドガー、・・・・と私。
そもそも恋人って、何?どうするの?何するの?手始めにキス?いやいやいや手を繋ぐ?
恋愛経験皆無な私の脳内は、文字通りメチャクチャな事に。
「もしかしてルドガー君がふぁーすとの彼氏なの?」
「そう、よっ」
「そうなの。良かったじゃない。ふぁーすとも恋できるようになって」
「あ、ありが、」
「じゃあこれからダブルデートしましょ」
語尾にハートが付く勢いで言われた私達は顔面蒼白。ルドガーもいっぱいいっぱいだったみたい。
「でも俺達もう出ないと、」
「へ?ふぁーすとは明日まで居るって」
「・・・・」
「え、えへ・・(ごめんねルドガー)」
結局相手の流れで、デートをする事になってしまった。スポットというスポットが無いから、レストランで食事、て程度だけど。
「私達付き合ってもう三ヶ月になるんだけどルドガー君とふぁーすとは?」
「きょ、」
「っ、九ヶ月なのっ」
明らかに今日からって言おうとしたよねルドガー。もうっ、解ってんのかな?
「九ヶ月っ?そんな前からなの?」
「前ってほど前って訳じゃないけど、いつの間にか九ヶ月・・みたいな?ね、ルドガー」
「あ、ああ。九ヶ月だ」
「そっか。じゃあもう経験済みなのね」
「・・・」
「・・・」
ケイケンズミ?とは何の事?
え、あれなの?コウノトリ的な?
チラッとルドガーを見れば汗だくでハンバーグにナイフを刺し入れた状態で固まってる。
「もしかして、まだだったりするの?」
「俺達は最近漸くって感じだったけど」
「わ、私はっ・・」
「ふぁーすとを、大事にしたいから手を出してないだけだ」
焦りを見せた私を庇うように言ってくれたルドガーを思わず見てしまう。そして迷いがないような瞳に、ついドキッとしてしまった。
「優しいなお前」
「ダーリンもルドガー君みたいに私を大事にしてくれたらなー」
「!、してるよ、愛してる!」
ふふ、と笑っていたらテーブルの下で手に何かが触れてきて、そして包まれた。
「ルドガー、」
「愛してるよ、ふぁーすと」
「へっ、・・ふ」
軽く唇に唇を当て直ぐに離れていく彼の顔。キスと理解した瞬間ぼんっと熱くなるのを感じた。
本気なの?へ、本気なのっ?
「やるールドガー君」
「見せつけてくれるな」
「あ、あっ、私・・急用思い出したっ」
「ちょっとふぁーすとっ?」
店から出て海停で海を眺めながらさっきの事を思い出しては唇に触れる。
ここは涼しい筈なのに顔が熱くてどうしようもない。
どうして?さっきのルドガーの目は本気で、表情はエルに見せる以上に優しくて。
私は、なに?ルドガーのこと、
「見つけた」
「ルドガー・・、ごめん。一日恋人だからって嫌じゃなかった?」
「お前はどうなんだ?嫌だったのか?」
「私は、・・」
「俺は本当の恋人になれればと思って」
賭けに出た。そう口にしたルドガーを私は責めもせず自然と抱きついていた。
「ルドガー、ありがとう」
「ああ」
「・・大好き」
恋、しました。
「見せつけてくれちゃって」
「ア、アルヴィン・・もう」
「お、キスしたぞ?」
「ちょっもう、アルヴィン!」
「大声出すなって」
「僕はも・・もも戻るからねっ」
20121110
ルドガーで甘くしてみました。そしてアルヴィンとジュード君は覗き役←
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