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イタズラ









「ハッピーハロウィンっ」
「なのじゃっ」
「おーおー、元気だなー」



仮装した私とパティが楽し気にユーリに言うと、何ともやる気のない声が返ってきた。




「ちょっとユーリ。もう少し明るくいこうよ」

「そうじゃぞ?」

「昨日は戦闘漬けで疲れてるんだよ。そうやってはしゃぎたいならエステルあたりとやってこい。」

「ふぁーすと、・・・やるのじゃ」

「そうね」




パティと一緒に、にじりにじりとユーリに近付いていけば、身の危険を感じたのか少し後ずさる。




「な、何する気だ?」

「大人しくするんじゃユーリ」

「お菓子を持ってないからイタズラするんだよ」



そんな事一切訊いてきてないだろっ、と言われ確かにそうだと思い、持っているのか訊いてみると、答えはノーだった。





「おい待てっ!」

「待たないのじゃあっ!!」

「イタズラーっ!!」

「うおおっ?!」























「さーて、次はレイヴンだね」

「そうじゃのー」

「・・・・・・」

「ほらっ、さっさと歩くっ」

「そうじゃっ」

「・・・・・」





宿屋の一室にいるレイヴンに声をかけてこっちを振り向くと、彼はギョッとした顔で見てきた。




「えーと、青年?」

「よぉ、おっさん・・」

「んー、そうねぇ。あだなちゃんとパティちゃんは合格として、・・・・青年は何なのよ」




そう、さっきイタズラとしてユーリにも仮装させた。
そんなユーリを見て苦い顔をしているのがレイヴンなのだ。





「レイヴン、トリック・オア・トリート」
「トリックなんたらなのじゃっ」
「え?」
「菓子くれねぇと殺すぞ」
「え、えっ?!」



ニッコリと笑顔の私とパティ、そして殺気を放つユーリに、レイヴンは何とも言えない恐怖を感じたんだろう。
完璧に腰が据わっていた。





「も、もうっ!おっさんを虐めないでよっ。普通そこはイタズラでしょーがっ」

「私達はそうなんだけと、ユーリは例外みたい」

「青年っ!小さい時どんなハロウィーンしてきたのよっ」

「こんなハロウィーン」



いやおかしいからっ、とレイヴンは逃げ腰で部屋から出ようとするけどユーリが許す筈もなく、




「待ってっ!おっさんお菓子持ってないから買ってく、」

「持ってねーならオレと一緒に仮装しろ」

「へ?」

「どうなんだ?」

「・・・・はい」




死んだように返事をしたレイヴンは最早拒否権もなく、イタズラされたくない(死にたくない)ので従うしかなかったんだろう。ユーリが仮装用の衣装を手に持つとずるずるとレイヴンを部屋の奥へと連れていく。





「レイヴンも苦労人じゃの」
「そうだね」




























「次はジュディス行っちゃう?」

「はいはいはーい!おっさんジュディスちゃんに悪戯する係引き受けちゃうよーっ」




興奮気味なレイヴンにちょっと引いてしまった。うん、私だけだよ。パティはおでん食べてて気づいてないし、ユーリも……、うん、鞘から剣抜いてるけど。






「あ、」

「どうかしたか?」

「イタズラの道具、レイヴンの居た一階の部屋に忘れてきたみたい」



私としたことが。こんな凡ミスをやってしまうとは。宿屋のこの暗い中を戻るしかない。仕方ない、私のミスだ。私が取りに行こう。




「ちょっと取ってくるね」

「おい、付いてってやるよ」


階段降りて直ぐだから平気だと伝えても、ユーリが折れる筈もなく物騒だからと理由を付けてきた。




「、ありがと。じゃあレイヴンとパティ。先にジュディスに会っちゃって」

「そうか?ならそうするかの」

「もうおっさんに任せなさいってのっ!ジュディスちゃんにならなんでも出来るんだから」




思わず苦笑いしながら来た道をユーリと戻る。

二人の間には会話はなく、黙々と歩くだけ。短い道のりだが、その間の沈黙は何とも気まずく、もどかしいものでしかない。

さっきの部屋に到着すれば、着いたな、とユーリの声が小さく鳴る。この胸の奥が苦しいのは何でだろう?今の私には解らなくて、モヤモヤしたまま返事をしながら扉を開ける。





「あれ?確かここに置いたんだけど」
「暗くてよく見えないな、っと・・おわ、」
「蝋燭に火を、…わっ!」



後ろからユーリがのし掛かってきてベッドに二人で倒れ込む。弾むベッドのなか、安定しないまま手を付こうとするユーリは何故かそれが出来ていない。そしてまた私の上に倒れ込んだ彼。バランス感覚がそんなに備わっていないのだろうか。





「わっ、悪いっ!」
「うん。平気だよ」



慌ててるのかな?なんて事を思いながら体をずらし上を向くとユーリとバチっと目があった。そのお互いの視線は外す事なく数秒見つめ合っていたら、私の頬に触れてきた。





「ユー、リ」

「・・・あだな」



そして段々距離が縮まり、






「ぎゃあああっ!リタっち止めてーっ!!」

「っ、あ。レイヴンの声?」

「・・・・はぁ」




何事かと私は部屋から廊下へ出ようとしたら、レイヴンが炎に包まれながら廊下を駆けていく。その後ろには追いかけるリタの姿も。




「居ないっ!!幽霊なんてっ・・ミイラなんてえっ!!」

「リタっち違うって!と、トリックオ、・・ぎゃああっ」



つい笑ってしまいながらも止めなくてはと思って廊下に一歩踏み出そうとすると、腕を引かれてベッドに座らされた。





「オレ達はオレ達で楽しもうぜ?」
「うん。宜しくね」




初めて軽くキスされて熱い顔を背けてしまうと、小さく笑ったユーリは再びキスをしながら私を押し倒した。




はっぴー・はろうぃん!

「何でジュディスちゃんの部屋にリタっちが居るのよっ!おっさん命がいくつあっても足りない!!」
「あたしの隣がジュディスって覚えときなさいよっ!いきなり扉開けて入ってきたのがあんなっ」
「いいじゃない。おじ様も火傷を負って本物のミイラみたいだし」
「良かないわよっ。おっさん部屋に戻ろうとしたら青年とあだなちゃ、」
「それ以上言ったらぶった切る」




20121030
投稿日::20121104

ハッピーハロウィーンっ!ですっ。
皆がどんな仮装をしたかはご想像にお任せしますっ






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