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相思







旅が終わってそのすぐ次の日から私は何故かアルヴィンと行動を共にしている。どの程度かと言われれば、一緒に住んでる程度・・です。

ま、だからといって恋人だとかそんな甘い関係でもなくただ同じ空間にいるだけだった。


そんな日々を過ごして、ほんの少し関係が変わった数日目の話をしよう。






「ただいまー、っと。頼まれてたアップルグミ買ってきたぞ」

「・・・うーん」

「寝てんのか?早いな」




その日は体のだるさから今までベッドで横になっていた私は、アルヴィンの声にうねり声を返した。
聞こえるか聞こえないかの足音でアルヴィンが近づいてくるのが解る。




「起きてんのか?」

「一応・・」

「・・・」



目を開けるとアルヴィンが私を見下ろしてた。かと思えば間近まで顔を持ってくる。

朦朧とした意識の中で何をしてるんだこの人、と思ったもののだるすぎてそれどころではない。





「おいチビ」

「一言余計よバカ」

「お前だって、・・ってそうじゃなくて」




いきなり頭に触れてきた彼の手がいやに冷たく感じて気持ち良い。




「やっぱり」

「・・何よ」

「熱があるんだよ。全くチビの癖にいっちょ前に風邪引くとはな」

「チビは関係ないでしょ」

「まあお前はチビの割りに出てる所は出てるもんな」

「セクハラだよ」



優しいとこもあるんだな、と感心したのは気のせいにしておこう、うん。
ゆっくり離れていく手が恋しくて、すかさず手を取ってしまった。私の行動に驚いたのかアルヴィンは、ん?と疑問の声を漏らす。






「あ、と・・・・・ごめん。何でもないの」

「風邪引いて人肌寂しくなったか?」

「解んない。けど、」




"もうちょっとだけ"、私のそんな小さな言葉にアルヴィンの手が一瞬、本当に一瞬ピクッと跳ねたのを感じた。
その手は私の頬に伸びて優しく撫でてくれる。

私がねだるような事を言ったり、彼がこんな風に触れてくる。こんな事、普段の日常じゃ有り得ない。

そう、・・有り得ない、のだ。





「アルヴィン、」

「ふぁーすと、お前熱いな」

「ねえってば」

「はいはい、何だよ」




今度は頭をポンポンと撫でる彼の手は、本当に安心してしまうものだと初めて認知した。

優しい、優しすぎる。故に脆いのが彼なのかもしれない。
そんな彼と旅の途中で出会って、嘘つかれて裏切られて。私や仲間は勿論辛かったけど一番辛かったのは、きっと、彼だ。

本当は仲間想いな癖に。
本当は仲間を大切にしたい癖に。
この時私にしてたみたいに。


そんな彼は私の中ではもう充分大きな存在で。







「一言、言って良い?」

「なんだよ」

「今の脳内アルヴィンだらけ」



今思えばこの時こんな事をよく躊躇なく言えたな、って笑ってしまうくらい自分でも思う。

風邪のせいで気がどうかしてたに違いない。けどだからと言って偽りがあるわけでもない。ただ、言わないと決めていたのだ、自分の気持ちを。





「何?遠回しに告白?」

「どうだろ・・?」

「曖昧だなー、」

「アルヴィンはアルヴィンだから無理しないでよね」



何でこんな言葉が出たのか本当に不思議だ。
力無く笑いながら言えば彼は私の手を握ってくれては優しく微笑んだ。




想い想われ

「ねぇアルヴィン何だかふぁーすとには自棄に素直だね」
「私はふぁーすとがアルヴィン君に身を委ねてる気がする」
「一ヶ月ぶりだけど随分と、」
「超夫婦って感じ」




20121104

まだ恋人にはなってない二人。ただ想い合ってるだけの段階、みたいな。
ジュードとレイアはほのぼのしながら話してそう。






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