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言えない







「ふぁーすと」

「・・、なに?」





ガイアスの城で出発まで私は一人、外の空気でも吸おうと出ようとした時、ウィンガルに呼び止められた。彼とは過去、被験体として共に過ごした日々もあったが、私達はいつまでも子供じゃなかった。それなりの関係になった。

あの歳で愛だの何だの語れるような立派な大人ではなかったと今の私には少なくとも言える。

ただただ曖昧な恋愛感情だった。


それ故か別れもそれとなく自然だった。私が自分で生きると決めてここから出ていく時に彼に告げた関係の終止符を止めもせずに淡白と応じた。

それから随分と大人びた彼に会ったのは、クレイン様に拾われたずっと後のミラと行動を共にしてからだ。





「随分と落ちぶれたな」

「・・貴方は立派になったわね」




あの頃と大違い、とぼやいてやれば彼も鼻で笑ってきた。





「ウィンガルは恋沙汰、あるの?」

「唐突だな」

「真面目な話なんて聞きたくないもん。これから大変なのに」




で、どうなの?と壁に寄り掛かってウィンガルを見れば、相も変わらず無愛想。





「あるように見えるのか?」

「さあ?」

「お前はあの男に目がないんだろう」

「あの男・・」




彼の言うあの男とは間違っていなければアルヴィンの事だろう。





「プレザはあの男を毛嫌いしている」

「だから何なの?彼女と一緒にしないで」

「痛い目をみる前に身を引いた方が良い」

「あのね・・、彼と私はそんな仲じゃないの」




私だけ好きで、両想いじゃない。そもそも痛い目になら何度も遭遇してる。何度も裏切った彼だもの。傷付かない筈がない。





「そうか。・・お前の自由だが忠告はしたぞ」

「それはどーもありがと。お節介よ」

「ふん、・・俺は会議があるからこれで失礼する」

「ねえ」





踵を返して歩き出そうとするウィンガルに声をかける。





「こんな話をするために私を呼び止めたの?」

「・・・」




暫く黙り込むウィンガルは何かを考える素振りもなくただ私を見ていた。

何を考えているのか解らないのは昔からで。真っ直ぐすぎるからなのだろうか。





「お前と」

「?」

「バカなお前と馬鹿な話でもしようと馬鹿な事を思っただけだ」

「バカって」




この男、バカって何回言った?じとりと睨んでやればまた鼻で笑われた。





「あの男がお前の手におえるとは思わない。精々痛い目を見ずに気を付ければいい」

「・・・、解ってる」




ウィンガルは会議に行ったのだろう。壁を背凭れにして立っていた私はずるずると座り込んだ。





「手に負えない、か」



色々言われたからか無償にアルヴィンに会いたくなって彼の姿を探す。噴水の所まで来ればすぐに見つかったが、思わず物陰に隠れてしまった。

プレザと一緒にいるとは。





「前みたいに仲良くやろうぜ?」



おちゃらけた彼の言い方。何いってるの?前みたいにってどんな風に仲が良かったのよ。





「期待させないで。もう捨てられるのは・・──」




この会話をこそこそと聞く自分って惨めだな。なんて自分を哀れんでみて会いたくなったのは私なのに、さっそく痛い目を見てしまった。





「・・!、ふぁーすと?」

「へ?」




話し終えたのか急に出てきたアルヴィンに焦りを感じて一歩後ずさった。





「ふーん・・なるほど」

「・・・っ」




両腕を壁に押さえつけられて逃げ場を失った私は、わざわざ私に目線を合わしてきた彼を見る事しか許されなかった。




「盗み聞き?悪いお姫様だね」

「・・・、」

「たく・・、普通に話しかけりゃ良かっただろ」

「邪魔かと・・思って身を引いてみましたー、なーん・・ちゃって」




ふざけながら言ってみたらアルヴィンはため息混じりに腕を押さえていた手を離してくれた。





「お前って不器用なのな」

「はっ?ちょ・・何でそうなるのよ」

「こそこそしちゃって。俺にもひっそり追っかけが居るとはね」

「馬鹿じゃないの?」

「じゃ何、ストーカー?」

「人聞きの悪いこと言わないで」




ストーカーだなんて、あのイバルじゃあるまいし失礼しちゃう。一睨みしてその場を去ろうと背を向けた途端彼に肩を掴まれまた壁へと押さえ込まれる。





「無機になんなって。つれねーな」

「放してよ、」

「・・・・」

「ふむっ・・!」




いきなり顎を掴まれてアルヴィンが、アルヴィンが、ちか、ち、近、いっ。

アルヴィンが少し離れて私は漸くキスされたって気づいた。初めてでもないのに変に動揺して思わず彼から顔を背ける。





「あらら真っ赤っか。初めてだった?」

「違うわよっ・・残念だったわね」

「・・気に入らねえな」

「ちょっ、んうっ・・!」




待って待って、さっきのとは比べもんにならないっ。両手で顔を包み込んで荒々しい程、深くキスをしてくる彼に抵抗しようと彼の胸を叩いたり腕を必死に退けようとした、が、





「ん、ん゙ぅ゙っ」




私が退かそうとすればするほど彼の手は離さないとばかりに力が込もって私の顔の方が痛い。

抵抗を諦めて大人しくしたら彼の口付けは荒々しさが消え甘えるようなものに変わった。

何だかんだ私も暫く彼との口付けに堪能していると横から人の気配がして目をそちらに向けると、





「あ、・・」

「!!」

「ぐあ゙っ・・」


レイアが顔を赤くして私達をじっとみてた。

慌てて放れない彼の急所を思いきり蹴り上げればなんとも言えない悲鳴をあげならが踞ってやっと解放される。





「ご、ごめんっ!二人がまさかこんな関係だなんて、」

「ち、違うのレイアっ!」

「それに知り合いが目の前でこんなことしてるの見た事なくってっ」

「レイア落ち着こうっ?私は別に」

「あは、あははははっだいじょーぶっ!二人の事はジュード達には黙っておくからっお邪魔しましたーっ」





颯爽と走り去っていったレイアに後でどう言い訳をすれば良いのだろう。チラッとアルヴィンを見ればまだ苦しんでいた。





「お前、・・限度ってもんを・・っ」

「レイアにどう説明すんのよ。だいぶ見いってたわよっ」

「そりゃ俺たちは出来てるって、」

「〜〜〜っ、勝手にすればっ?」





嫌だと言えない

「・・私って狡いな」
「ねえふぁーすと、き、キスってどんな感じ?」
「レイアっ」

「あいつの初めては誰なんだ?考えたくもない」
「アルヴィンどうしたの?」
「ジュード・・なわけないよな」
「は?」









201101208
投稿日//20120706

ジランド戦を前にして何やっちゃってんのwwアルヴィン君はこんなキャラなのか疑問です


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