彼女の世界
疑問
また俺は非常階段の下にいた。
このところ、暇だといつもここに来る。
そして彼女もまた、よく来た。
「ねぇ、傷増えすぎ」
「そうかな?」
最近、かなりここに来ているだろう彼女の二の腕には、初めて見たときの倍ほど赤い筋があった。
俺は彼女がここにいるときにいつもいるというわけではないから、俺がいないときもと考えると、かなりしている。
日陰だからまだ涼しく、おりてくるまでにかいた汗がひいていくのを感じた。
「体育そろそろ半袖じゃね」
「あっ、そうだった!」
やばいな―、そう言って自分の左腕を見て、ゆっくり傷をなぞった。
「じゃあ、しばらくやめよ」
彼女は寂しそうに笑って、何かをごまかした。
俺はその後も変わらず非常階段の下によく来ていて、すっかりお気に入りの場所にしていた。
数日後。すっかり暑くなり、熱中症とかそういった類のものにならないよう、やはり体育での半袖は強制的になった。
軽く彼女を探してみた。
教室で半袖の彼女をみつけ、少しホッとした。
その腕は、他の人にはわからないくらいの跡しかなく、本当にしないでいたのがわかった。
見ていたのはほんの少しの間だったけれど、彼女と目が合い、軽く笑い合った。
互いに自分の左腕を掴みながらで、何かの合図のようだと思ったけど、周りには気付かれなかった。
そのまま普通に移動し、やはり何も喋らずに過ごした。
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