ばけ×ばか
……普通に?
思わず振り返り、音のした方――屋上の扉をみつめる。
今は授業中だし、鍵も掛けていたから、やはり閉じられている。
でも確かに、扉から音と声がした。
普通に驚いたぞ。
今も心臓が凄くどきどきしている。
扉をみつめたまま、身動きを止める。
その音はまるで、勢いよく扉を開けすぎてまた閉まったかのような音で。
何かを言おうとしていた声は、勢いのせいで自動ドアの如く戻ってきた扉により遮られたかのような。
…んな阿呆みたいなことなわけないか。
そう思って、だいぶ心臓も落ち着きを取り戻してきたし、扉から視線を外した。
「…君はミツ子さん、だね?」
バッと振り向くと、さっきまで誰もいなかったはずなのに、そこには人がいた。
黒髪のおかっぱ頭で眼鏡、の怪しい男。
少々小柄だったから、
「………ざしきわらし?」
とか言ってしまった。
小柄と言ってもパッと見155センチくらいはありそうな身長で、この学校の制服を着ているからそんなわけは無いのだが。
「ちょっ褒めても何も出ないけどっ!」
そう言って、指に髪を絡ませくるくる。
…俺は今褒めたか?
すごい照れ気味に片手を左右にぶんぶん振っているけど。
顔はよく見えないけど、見えている口が弧をえがいているから嬉しそうだ。
「アンタ誰?」
同学年の一年の顔と名前は大体覚えているが、コイツの顔は知らない。
もちろん名前もだ。
同じ色の上履きを履いているのに。
この学校の制服を着ているけど、在校生かどうかすら怪しく感じた。
だから、普段上辺に見せるような作った笑顔で、警戒していることを隠しながら聞いてみた。
気付いているのか否かはわからないが、にこにこしながら、彼は言った。
「はじめまして、僕は佐倉未智。僕はアナタのことを知っているよ。」
―――ミツ子さんのことをね。
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