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ばけ×ばか
5




佐倉は笑みを浮かべたまま、ゆっくりとこちらに向かってくる。


「君、ほんとは死にたくないんでしょ?そのしっかり力の入ってる両手、ふふ。
僕が急に現れて君すごく驚いてた。で、無意識にその手は正直に、落ちてしまわないようにフェンスを掴んだのを僕は見ているからさ、何かいつまでも意地はってそこにいるの、ウケる。」


…普通、明らかに自殺しようとしてる奴を見てこんなに煽ったりするだろうか。
さすがに人殺しになるようで嫌だから、逆に説得したりとかするもんじゃね?
説得してほしいわけじゃないけども。


でも、この両手には、気付かなかった。

本当に無意識で、見れば、筋張るほどの力を込めていた。



「あのね、そんな君に協力してほしいことがあるんだ。本当ちょうどよかったよ君みたいな人がいてさっ!」

いつの間にか目の前に来ていた佐倉は、満面の笑みでこう言った。




「僕幽霊の研究してるんだ。存在はもちろん、死亡直後の魂の行方とか、色々。でも捜しても中々いないから、

いっそ、誰かになってもらおうってさ」


また無意識に力がこもり、反射的に言っていた。


「無理」



えぇ―っ!と声をあげる佐倉を無視してフェンスを登って、内側に着地する。

すると、足を着けてすぐに力が抜けた。
よろけた体は意外にも、佐倉が寄ってきて支えてくれた。


「残念だけど、君は諦めるよ。」

そう言って笑った佐倉は、近くで見るとかなり華奢で小さく、抱き着くように俺を支えているけど力尽きたもよう。
二人でその場に座り込んだ。


「幽霊になってもらう話は、ね。」

抱き着いたまま、ニヤリとしながら力を込められ、変な奴に目をつけられた…と軽く、いや正直かなり、後悔した。



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