遥かなる時空の中で〜金糸雀の君〜 3 クラスメイトは日直らしく、先に走って行ってしまった。 今日はやけに早く家を出てしまった。そのせいか、周りにはあまり生徒が歩いていない。 時間に余裕があると、なんだかやけに景色が目に飛び込んできて。 こんな所に花が咲いていたんだとか、こんな所に川が流れていたんだ、とか。 そして。 「あれ?」 私は立ち止まった。 こんな所に、こんな古家があったかしら。 黒瓦の門構えに、木製の扉。 不用心にも開いていて、そこから中が丸見えである。 いや、人気が感じられない。もしかしたら空き家か? なら不用心ではないな。 私は好奇心に背中を押され、そろりと門を跨いだ。 ………ミツケタゾ 「え?」 今、何か声がした気がする。 低く、頭に響く声。 私は歩みを止め振り返った。家人がいたのだろうか。 しかし、人気はない。 気のせいだろうか。 気がつくと、家の裏側まで来てしまっていた。 石造りの井戸。 落ちないようにか、木の蓋がされている。 「井戸なんて、生で見たの初めてだわ」 私はその井戸に触れようとした。 [*前へ][次へ#] [戻る] |