遥かなる時空の中で〜金糸雀の君〜
3
「うわー…」
私が連れてこられたのは、大きな屋敷だった。
さっきみたボロボロで質素な家とは違い、門構えも屋根もしっかりしている。
屋敷自体も大きく、門番らしき男も数人立っていた。
富豪の屋敷だと、一目で分かった。
「…泰明殿…?」
「頼久か」
泰明さんが門に立つと、頼久と呼ばれた男が駆け寄ってきた。
うわあ…まるで俳優さんみたいに綺麗な顔。
私の頭何個分もある長躯に、がっしりとした体。長い髪は、無理矢理って感じで頭のてっぺんで結わえられている。
よく分からないけど、刀を持ってるってことは、武士?
「神子はいるか」
「いえ…。今日は友雅殿と鷹通殿と札探しに出掛けており、まだご帰宅……」
ふと、男性は私を見た。
そして、切れ長の目をギョッとさせた。
「これは……っ。このままでは、風邪を……」
「え!?あ、あの…」
「すぐに女房殿に着替えを頼みましょう。どうぞ中へ」
「頼久、ついでに天真か詩紋を呼んでもらえぬか。確かめたいことがある」
「……承知」
私たちは、足早に屋敷のなかへ入っていった。
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