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俺の疑問には柚木先輩が答えてくれた。


「そっか、そういうことなんだ〜」

「あと、一般入試で入学していなくても、特定の役職に就けば5階の部屋を使用できます。生徒会か、各委員長か…私はさっき、あなたがこのどれかの役職に就けるようになれば話は別だと言ったんですが、もう違う意味でここに来れる生徒になってしまったようですね。
和渕君も、お友達が出来るの早いですね。
少し驚きました。よかったですね」


そういって先輩は薄く笑った。
俺はもう口を開けてポヤーっと先輩を眺めていた。


「あ、はい!あの時は相談に乗って頂いてありがとうございました」

「いえ、私も似たようなものでしたから…そうそう、今も相談を受けに行くところだったんですよ。
待たせては申し訳ないですから、また」

「そうだったんですか!引き留めてすいません」


柚と柚木先輩が並ぶと、なんだかそこは清廉な空間になる。

一瞬俺空気だったし。

柚と柚だけに、二人はちょっと似てるかも。


凛と背筋を伸ばして去っていく先輩を見送ると、柚は俺に向き直った。


「紫苑、いつまでその顔でいるつもり?凄く…アホっぽいよ」

「え、マジ?」


慌てて顔を引き締める。
なんか会う人会う人みんな綺麗だから、平凡な俺は軽くトリップしちゃったかな。


「てか、あの人知り合いなの?」

「うん。風紀委員長の柚木和葉(ゆずきかずは)先輩。
合格発表の時に初めて会ったんだけど、結構相談にのってくれるんだ。最初怖かったけど優しい先輩だよ」

「そう!最初怖かった!でもいい人っぽいなと思った」

「そうそう。で、なんで紫苑は先輩とこんなとこにいたの?」

「食堂で柚と別れた後考え事しながら歩いてたらいつの間にか5階にいて、先輩に怒られた」

「あちゃー、タグ渡すまで5階は来ちゃだめだって言えば良かったかぁ」

「うん。鷹に睨まれたネズミの気分だった…」

「あはは!蛇に睨まれた蛙?そんな怖かったんだ」

「素直に謝ったら許してくれたから良かったけど。
柚は何してたの?随分遅いじゃん部屋に戻るの」

「っ…ちょっと売店で買い物!新しいペン買おうと思ってさ」


柚はずっと手に持っていた小さくて細長い包みを背中に隠した。

実はそれ何なのかずっと気になってたのに。残念ながら教えてくれないみたいだけど。


「そ、そういう紫苑こそ、こんなとこにいていいのか?
あいつ、西條はどうすんだよ。まだ部屋戻ってないんだろ?」

「あ!!」


やっばい…!

一瞬にして体温が下がった気がする。


「あ〜あ、大分様子おかしかったし、早く行った方がいいんじゃない?」

「そ、だよな…うん、じゃあとりあえず俺、部屋戻るわ!」

「うん、また明日」


新しい出会いに気を取られて、また湊を後回しにしてしまった。

こんなんじゃ余計怒られるよな…誠意のないやつって思われても仕方ない。

早く行かなきゃ。

それだけを考えて、誰もいない廊下を走った。















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