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俺を上から下まで見定めるようなその視線に怯えて、縮こまり混乱しながらも早口で言い訳した。
さながら俺はネズミのようだ。

それでも緩む事のない視線にもう謝るしかない!と思い切り頭を下げたのだが、反応が返ってこない。

頭を上げられないまま心の中で祈った。


「一般生徒は基本的に5階は立入禁止だと、寮則にあるでしょう。
…と言いたいところですが、あなたは新入生ですね?今日から入寮で、明日説明会があるというのにもう寮則違反ですか。
知らないものは仕方ないですが、誤って5階に来た新入生はあなた一人ですよ?
もっと落ち着きをもちなさい」

「はいっ!すいません!!」


溜め息をついた後で、思いの外冷静で優しい声に注意された。

そっか、寮則なんてものがあったのか。

でもなんで5階は立入禁止なんだろう?

なんでこの人は5階にいるんだろう?

てかこの人誰?

聞ける訳無いけど。


「あなたは素直な生徒のようなので、誤って来てしまったというのは信じましょう。
ですが今後このような事のないように。寮則は寮則ですから。あなたが5階に来てもいい生徒になったなら、話は別ですが。
もう遅いのですし、早く自室に戻りなさい」


顔を上げてみると、さっきの獲物を捕らえるような視線はなくなり、このたぶん先輩は穏やかな無表情になっていた。

たぶん表情が乏しい人なんだろう。無表情だけど、もう怒ってないことはわかった。

しかもよく見るとこの人すごく綺麗だ。眼鏡に隠されてわかんなかったけど、柚並に美人さんだ。


「(なんか凄く見られてる)…?」


「あれ、紫苑!?と柚木(ユズキ)先輩!?」

「柚!?」


ちょうど柚が階段を上ってきて、俺と先輩と鉢合わせた。

ヤバい柚逃げろ!
そうしないとお前が寮則を知らない2人目の馬鹿に…!


「和渕君?知り合いですか?」


先輩は俺に手を向けて柚に尋ねる。

え?先輩こそ柚の知り合い?


「はい、友達です。
紫苑はなんでここにいるんだ?」


柚は先輩に答えると、俺に質問を向けた。

なんでここにって言われると、俺はここにいちゃいけないってわかっててもちょっと傷付く。

でも柚の次の言葉にぶっ飛んだ。


「俺に何か用だった?」

「………え?」

「部屋番教えたじゃん。521だって」

「……え?500台って…柚の部屋って…」

「うん、そこ」


そう言って柚は階段から見える右から2つ目の部屋を指さす。


「ええええ5階一般生徒立入禁止じゃ…!」

「うん、らしいね。
一般生徒がもし5階に来るなら、5階の生徒にそれを認められた証であるタグをつけなきゃなんだってさ。さっきは持ってなかったから明日説明会の時に紫苑に渡そうと思ってたんだけど…」

「そうだったんだ…!
てか“5階の生徒”って何?美人なの?」

「は?」

「5階の生徒は、基本的には一般入試での合格者ですよ。男子はかなり少ないですから、よりよい環境で勉学に励めるようにと、まとめて5階に住まわせているんです。ここなら1人部屋ですし、一般生徒は立入禁止なので静かに勉強出来ます。解らないところがあれば同級生でも先輩でも、自分と同レベルかそれ以上の人にすぐ聞きに行けますしね」


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あきゅろす。
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