[携帯モード] [URL送信]



「??」

「(言ってやろうか…でもきっと紫苑もこの学校の女子に憧れを持ってるんだろうしな…本当は大多数が自分の恋愛より男同士の恋愛に興味があるなんて…言わない方がいいか)
とにかく、無駄な幻想は早々に捨て去ることだね」

「ふぅん?」


よくわからなくてもやもやしたままだけど、まあいいか…?



ちょうど二人とも食べ終わったので、トレイを持って立ち上がる。


カウンターに向かうと、再び目に入った大きい『薔薇園』の看板。


「あれすごいよね。看板自体もデカくてすごいけど、ネーミングもなかなか…」


何気なく目に入ったから言っただけなんだけど、柚は隣でわなわなと震えている。


「まさか…食堂のおばちゃんまで腐ってるなんて…!」

「どしたの?」


なんか柚は凄くダメージを受けているようだけど、最初に気付かなかったのか?


「…紫苑、薔薇の意味、わかる?」

「意味?“情熱”とか?」

「(BLって言ってもわかんないよな…つか知っててもヤダけど)
そうだな…あの名前はきっとおばちゃんたちの幻想世界のことだよ。ここをその幻想世界と重ねてるんだ…」


大丈夫か柚。
なんか悟りを開いたような目してるよ。
乾いた笑いしか出てないよ。
大丈夫か。

『薔薇園』の破壊力すげぇ。



その後疑惑の眼差しでビクビクしながらおばちゃんにトレイを返す柚を見守り、明日寮内散策がてら柚の部屋に遊びに行く約束をした。

柚と別れて自室へ戻る途中、湊と気まずくなってしまっていたのを思い出した。

今まで忘れてしまっていたことに少し罪悪感を覚えながらも、部屋に戻ったらどう接するべきか。

ぶっちゃけ、俺そんなに悪くないと思うんだけど…未だに湊がなんで不機嫌になったのかわかんないし。


確か、『態度が違う』みたいなこと言ってたっけ。

違うって言われても…そんなつもりないしなぁ。
もしそうだとしたらそれは無意識だから、直しようがないし。

どうしろって言うんだよ〜…。



考えながら歩いていたから、目の前に階段がなくなってからやっと階段を登りきってしまった事に気付いた。
5階まで、だ。

部屋は3階なのに。
まだ今日寮に来たばっかりで、自分の部屋へ足を運んだのも1回きりだ。
勝手に足が部屋へ向かう、なんてことはない。


あれだな、電車で降りる駅寝過ごした感覚だ。
あれすげー虚しくて悲しいんだよね。自分の馬鹿さ加減に泣きたくなる。

しかもこれは無駄に歩いた事になるから余計虚しい。
2階分また戻らなきゃだし。


溜め息をついて踵を返そうとした時、鋭く呼び止められた。


「君!一般生徒のように見えますが、何故ここにいるんです?」


ビクッとして振り返ると、いかにも厳しそうな人がこっちにずんずん近付いてくる。

この人の眼力ヤバい。
温度のない色で差し迫ってくる感じ。あれかな、鷹みたいな。
鷹見たことないけど。


「え…っと、考え事してたらいつの間にか階段上りきっちゃってて、あ、俺3階なんですけど通り過ぎたの気付かなくて、ここまで来てやっと意識取り戻したっていうか、今戻ろうとしてたんであの何かすいません!!」



[*前へ][次へ#]

7/16ページ

[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!