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「オムライスセットで」
「はいよ!じゃあちょっと待っててね!」
一瞬呆けていた俺は、湊の声で我に返った。
おばちゃんは奥に消え、少し待たなくてはいけないようだ。
「紫苑決めるの早かったな」
「ああ、俺悩むの嫌いなんだよね」
「へ〜…優柔不断な奴は嫌い?」
「ん〜時と場合によるなぁ」
取り留めのない話をしていると、突然後ろからガッと肩を掴まれた。
ビクッとして振り返ると、そこにいたのは美人さん。
いきなり顔が近かったし、身長もそんなに高くないから、最初は女か男か判らなかった。
でもよく見ると髪が短かったので、男だと判った。
そして何故か、捨てられた仔犬が飼い主を見つけたかのようにキラキラした瞳で俺を見ている。
「えっと…何…?」
「キミ、クラスどこ?」
「3組だけど…」
そう言うと彼はとてつもなく嬉しくて安堵しているような顔を見せた。
「良かった…っ!俺も3組なんだ!仲良くしてよ」
初対面の筈だけど…彼にとって俺と同じクラスだと何かそんなに嬉しいことがあるのか?
早くもクラス内に友達が、しかもこんな美人の友達が出来るなら、俺にとって損はこれっぽっちもないけど。
「あ、俺和渕柚郎(わぶちゆずろう)っていうんだ。よろしく」
にっこり笑う顔はとても綺麗で、何だか上品だ。
「うん、こちらこそ。俺は小柳紫苑。あと、こっちは西條湊。俺の同室」
「あ、そうなんだ。よろしく」
黙っていた湊もついでに紹介すると、柚郎は俺の時より大分素っ気なく挨拶した。
「キミは何組なの?」
「俺は4」
「そっか、隣か」
ここで初めて、俺は湊のクラスを知った。
そういえば聞いてなかった。
基本的に同室者は違うクラスになると聞いていたけど、隣かぁ。
「じゃあ体育は一緒だね」
「そうなるね」
「あ〜、俺は一部違う…」
柚郎は言いにくそうにそう言った。
「え?なん「はい!お待ちどうさま〜!」
問い質そうと思った時に、丁度メニューが出来てきて、おばちゃんに遮られてしまった。
「紫苑、席取りに行こう」
さっさと自分のメニューを取った湊に促される。
「うん。柚郎も一緒に食べよう?」
「うん、じゃあメニュー貰ったら行くよ」
言っている内に湊はスタスタと行ってしまうので、小走りで追いかける。
湊は何故か若干不機嫌そうに、空いているテーブルに座った。
不思議に思いながらも俺は湊の向かい側に座った。
「紫苑さ、何か態度違わない?」
「え?」
「俺に接する時と、あいつに接する時で。何か差を感じるんだけど」
そんなつもりはないんだけど。
というか湊の方が、いきなり雰囲気が変わった。
さっきまで爽やかイケメンオーラ出してたのに、今は何だか刺々しい。
「気のせいじゃない?」
「俺は最初苗字呼びだったのに、あいつはいきなり呼び捨てだし。ずっとニコニコしながら喋ってたし。俺と接する時は1枚壁がある気がする」
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