# 何か奏芽に出来る事はないかと思考を巡らせていた未頼にとって、一人勝手に喚く声は煩いものでしかない。 適当に流して無視しようと思っていたのだが、意図を感じる物言いに苛々してつい遮って口を出してしまった。 「………」 黙り込む相手にまた苛つく。 「チッ」 舌打ちをすると獲物はビクッと肩を揺らした。 「…お願いだ、見逃してくれよ…。もうあそこには戻りたくない。あんな、あんな…! ……一体俺たちが何したって言うんだよ。何もしてないだろ!ただ生まれが…なだけで。 なぁ、何で俺たち捕まえようとすんだよ!!」 「……知らねーよ。 俺にとってお前は金でしかない」 「たのむ、たのむよ…。何でもする、あんたの言うことなんでもするから」 「お前にしてもらいことなんかねぇよ。強いて言うなら、黙れ」 愕然とした表情になるそいつに未頼は目も向けない。 そこへ丁度車のクラクションが聞こえた。 未頼は奏芽を抱き上げて素早くそこを立ち去る。 雨は、激しさを増していた。 「おー。感謝しろ、クソ忙しい中来てやったぞー」 「ああ、ありがとう」 「にゃんにゃんは無事か?」 「無事じゃないから呼んだんだろ。あとその呼び方やめろ」 「あーあー、こりゃひでぇ。 お前何やってたんだよ?」 「……とにかく急いでくれ」 「…へいへい」
[*前へ][次へ#] [戻る] |