405号室の哀愁。
あまい、日々。
それはそれはとても甘いものなのです。
どれほど甘いかと言われれば、どろりと甘いのです。
「J、そろそろ」
もう待ちきれない、と声をあげる。
上を見上げるJにTは眉を下げた。
「帰りたいの、T?」
「だって、世界が、眠るから」
困ったように、小さく笑いながらTが言う。
そう、そうだ。世界が眠る、もう、そんな時間。
「じゃあ、帰ろっか」
小さく、ぽそりと呟いた声を聞き取ったTは、笑う。
「うん、帰ろう。みんな、待ってる」
微笑むTは、何もない上を見上げた。
何もない上に、ただ広がる黒を見る。
「僕らには、時間がないから」
だから、しかたがないのだと。
時を感じられないのはしょうがないのだと。
そう、Jは悲しそうに言った。
「でも、みんな待ってる」
帰ろう、Tは笑った。
泣かないように、悲しむことのないように。
でも、それは永遠に付きまとうものだから、しかたがないと。
そう簡潔できる僕等はもう、永く存在しているのだけれど。
それはそれはとても甘いものなのです。
どれほど甘いかと言われれば、どろりと甘いのです。
蜂蜜のように黄色く、
チョコレートのように甘い、
そんな僕らの、動くことのない時の優しさ。
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