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ガーーーーーッ
自動ドアが開き、ジャカジャカと騒音の鳴り響いてる店内から外に出ると、体がぶるりと震えた。
「んだよ。寒ィと思ったらこんなもんまで降ってきてたのかよ」
空を見上げるとフワフワとゆっくりゆっくりと舞落ちてくる白い塊。
手の平に乗せると、体温でとけ、すぐに水へと変わる。
儚いその様子に、余計に寂しくなってくる。
目の前を行き来する人々。たいていはカップルが多い。楽しそうに腕を絡めて歩いてたり、待ち合わせ場所にいくのかはたまた家に帰るからか時計を気にしたり。
いつもとおんなじネオン街なのに、いつもと違う雰囲気。
そりゃそうか。今日はクリスマスイブだもんな。
でもま、俺には関係ないし。
いや、本当は関係なくなかった。ちゃんとした約束があったのだ。そのために神楽を新八に預ける準備もバッチリだったのに、今、この状態と言えば‥‥
暇潰しにきたパチンコで負けに負けてスッカラカン。
「まあ別に?土方くんが仕事なのはいつものことだし?期待なんかしてなかったっつうの。べっつにクリスマスなんてあれだろ?だいたい日本の風習じゃないし。あー‥‥なんか酒でも飲んで帰りてぇなあ」
そう思ってポケットを探るが、出てきたのは小銭ばかり。
「しゃあねーな。カップ酒とつまみでも買って帰るしかない‥‥‥か」
万事屋への道を歩きだすと、ちょうど長谷川さんが前から歩いて来る。
「長谷川さんじゃん。どうしたの、やけに嬉しい顔して歩いてんじゃん」
「お、銀さん!いいところにあったよ。これから予定ないんなら一緒にちょっと飲みに行かない?」
満面の笑みを浮かべた長谷川さんは、そういいながら片手で酒を飲む仕種をする。
「いや、俺も暇だからさあ行きたいんだけどね、パチンコに負けちゃって金がなあ‥‥」
「それなら俺に任せとけって!!今日さ、競馬であたっちゃったんだよ!なんか俺サンタからプレゼント貰った気分でさあ。今日は俺が奢っから、な、行こう銀さん」
背中をバンバンと叩きながら上機嫌で誘われれば、こっちもノらない訳が無い。飲みたい気分だったし。
「そうゆうことなら折角だから飲みいきますか!!」
「そうそう!そうこなくっちゃね!」
肩を組まれ、もうすでに少し出来上がってる風の長谷川さんと話をしながら飲み屋を目指して歩いてると、今度は土方が正面から走ってくるのが見えた。
あーらら、あんなに急いで。相変わらず仕事大変そうだねぇ、一人でいるのは珍しいけど。
危ないよー、どこに年末で殺気立ってる攘夷志士が紛れてるかなんてわかんないんだから、隊服着てんのにあんまり単独で行動するなよな。
副長ともあろう奴が。
近づいてきた土方に声だけでも聞きたいと適当に声をかける。
「よぅ、おたくらんとこは相変わらず忙しそうだねぇ‥‥‥おわッッ、ちょ、なにすッ」
てっきり隣を通りすがっていくと思ってたのに、土方の腕が俺の胸元へと絡まり、あっという間に土方の腕の中。
「あれ?あれ?銀さん?」
急に消えた俺にびっくりして長谷川さんは腕をスカスカさせている。
「悪ィがコイツにちょっと用があるんでな。銀時は返して貰うぜ」
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