3 オレヲミテ
耳元でカチカチカチカチ音がする。
何だろうと目を開けると、携帯を触っている土方が目に入った。
「土方、何してんの」
「あぁ。この間から名刺にメルアド入れたらよ、作家やら知り合いやら、なんでもかんでもメール送ってくるもんだから、とりあえず返しとこうと思ってな」
「人気もんだね」
「んなんじゃねーよ。ただ来るから返してるだけだっつーの」
ふぅん。
ね、俺の携帯に土方からくるメールなんて全然ないよ。
「カチカチうるさくて寝れないないんですけどォ」
「あ、悪ィ。ちょっと向こう行ってるわ」
悔しくてちょっと厭味を言っただけなのに、布団をでてバタンと戸を閉め、隣の部屋に行ってしまった。
−−−−−え。
なに。
何でそうなるわけ?
そんなにメールのほうが大事なの?
誰から、なんて女みたいなことは絶対言わない。
でも‥‥‥‥さみしい。
さみしいよ、トシ。
涙が、出て来た。
声が出るわけでもなく、ただぽろぽろと流れてきた。
もう、自分は構うほどにもない存在なのだろうか。
胸が痛かった。
恋がなくなる日てこんな感じなのかな、なんて今の状況さえ分析してしまう自分が恨めしく思える。
眠れないまま横になっていると、一時間程して土方が布団に帰ってきた。
寝たふりをしていると、何事もないかのように、しばらくすると寝息が聞こえて来た。
いつものように背を向けて。
土方は気付かない。
俺の影が差した心にも、きっと少し腫れてしまっただろうまぶたにも。
胸の痛みは腹部に降り、冷たい黒いモヤとなった気がした。
温めてくれる体温は、もはや感じられず。涙を拭ってくれる手もここにはなかった。
ただ、空白が、二人の間の溝を拡げていった。
それから、俺は違う作戦に出た。
まず、自分からは用事以外は話しかけない。
メールなんかもちろん送らない。
土方を待たずに、先に寝る。
結果は、散々。
会話がなくなり、一緒に寝ることも少なくなっただけ。
話し掛けられても、緊張するくらいに不自然になっただけ。
‥‥‥俺をみてよ。
‥‥‥ねぇ、土方。
俺は‥‥‥必要?
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