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「‥‥‥そっか」


そうじゃなかったらいいなんて正直思っていた。が、現実はそんな都合のいい綺麗事ではおわらない。


「そんな悲しい顔すんなよ、十四郎。だってな、俺だって貰うもん貰ってんだからさ、せめて相手に快楽だけでもあげとかないと、って思うじゃん?‥‥‥ああ、でもお金まで置いていったのは十四郎が初めてだけど」


そういってクスクスと楽しそうに笑う。


「なっ、いやマジであの時は財布まで落として大変だったんだよ」

「それにあんなにいっぱい気持ちよくなったのも初めてかもな」


頬に手を添えられチュッと軽くキス。
いやいや。
我慢してんだから。これ以上はやばいから。


「いつもはさ、記憶綺麗に無くなるのに。俺のことを覚えてたのもお前が初めて。‥‥初めて尽くしだな、十四郎は」

「銀時‥‥」

「名前なんて呼ばれんのどのくらいぶりだろうなあ、十四郎が見ず知らずの俺に対してあまりにも普通に名乗るもんだからつい答えちまったっつうの。あ、もしかしてそれが失敗の原因かなあ。でも失敗しなきゃこうして会ってないもんな」


そう笑う銀時が愛おしく胸にギュウと掻き抱いた。


「銀時。もうそんな真似すんなよ。俺の血で良かったらどれだけでもくれてやる。だから他の奴の血なんか欲しがんなよ」

「あー、でも十四郎それは‥‥」

「頼むから俺だけにしてくれ。他の誰にもお前のあんな姿見せたくない」


誰かと寝るとか想像しただけでも頭が沸騰する。
銀時の中に違う奴の体液が流れるかと思うと気に食わない。
だって好きなんだ、当たり前だろう?


「お前変な奴だね、十四郎。俺達会ってそんなに経ってないのにさ。‥‥‥わかった。そんなにいうんなら、いいよ」

「本当か?!」

「でも十四郎が俺のご飯だからね。鉄分いっぱいとって美味しくなってくれよ」

「プッ、なんだそりゃ」

「いや、重要なとこだろ、それ」

「そういえば不思議に思ったんだけどよ、普通、吸血鬼って処女の血とかじゃないのか?」


疑問に思ったことを口にする。


「いや俺、女の血はもう受け付けないんだよな、実は。この屋敷の主人さあ、ああ、もうとっくに死んじまっていないんだけどな、ちょっと頭いっちゃってて。俺そいつに閉じ込められてた時期あったんだけど、女の子の血、どっかから調達して無理矢理飲ませるわけよ。それ以来トラウマでもうだめ」

「銀時‥‥‥」

「同情とかすんなよな。長いこと生きてりゃいろいろあんだよ」


そんなさらりという銀時にはいくつの困難があったのだろうか。出会ったばかりの俺が聞くのもおこがましく、いつか自分から話しをするときがあったら静かに聞いてやりたいと思う。
取りあえず今は先のことを。


「お前いったいいくつだよ」

「なーいしょ。誰がいうもんかよ」


そういって拗ねたように反対を向いてしまった銀時を背中から抱きしめる。


「お前、あったかいな。俺‥‥冷たいだろ?あんまり体温あがんねーから」

「俺は暑がりだから冷たいもんにくっついてるくらいが気持ち良くてちょうどいいんだよ」

「そうなのか?ならいいけど‥‥‥お前、明日も仕事なんだろ。朝勝手に出てっていいから。俺‥‥朝は苦手‥‥‥」


そういいながら寝てしまったようだ。
初めて見る銀時のかわいい寝顔。
俺はいろいろとこれからの計画を頭の中で練ってるうちに知らず知らずのうちに眠りについていた。


その計画が銀時にかなりの負担をかけることになるなんてことは、ちっともわかっていない大バカヤローだった‥‥‥


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