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1 ユメノナカデモ

『坂田先生ってやっぱり恋愛経験豊富なんですか?』

いやいや、こうみえても案外奥手だからね。

『現在付き合っている人はいますか』

まあね。一応はね。

『幸せですか』

幸せ・・だよ。


雑誌の企画だかなんだかのインタビューも終わり、ふぅと溜息をつく。

小遣い稼ぎにならないかと、たまたま書いた小説が賞を受賞し、いまじゃ立派な恋愛小説家になってしまった。

幸せ・・か。ほんとにそうなのかなあ。

多忙に多忙を重ねている元担当に思いを馳せる。



「はじめまして。坂田さんの担当になりました、土方十四郎です」

生真面目そうな男はそういって頭を下げた。

「はい。どぉも。坂田でーす」

作家と担当。

こんな関係からはじまった俺達は、月日と共に親交を深め合い、今じゃ恋人同士と言えるまでの関係に発展した。

あれから四年・・俺は人気作家となり、土方は副編集までのし上がり、お互いに多忙な日々を送っている。
担当も途中からドS丸出しの沖田に替わり、〆切りにはその根性を思い知ることになる。

幸せかって?多分としかいえねぇな。一緒にいるだけ幸せかっていえば幸せなんだろう。
・・・でも、最近はさみしさのほうが上かな、なんて考える。
そう。
いろんな意味で、さみしい。




ガチャ。
玄関のほうから鍵を開ける音がする。

鍵を持っているのはただ一人。
誰が入ってくるかはわかってるので出迎えない。

「お疲れ」

「おう」

いつもの挨拶。

俺もパソコンに向かったままちらりと目を交わすだけ。

「風呂借りっぞ」

「どおぞ」

別に土方と一緒に住んでるわけではない。
住んではいないが、会社から自分の家に帰るより近いこの家に、あいつは『寝に』来る。
月の半分以上はその状態なので、あちらこちらに土方が持ち込んだ私物があった。今も自前のタオルを手に、ガシガシと頭を拭きながらビール片手に風呂場から出て来た。

「お疲れさん」

「あぁ」

「今日も遅かったな」

「なんだかんだとあってな。悪ぃけど横になっていいか」

返事を待たずに席をたとうとしている。

「あ、俺もそろそろ寝るわ」

追い掛けるように後を追い、布団に入る。

土方はいつも通り背を向け、横になって眠りに入ろうとしていた。

「おやすみ」

背中に声を掛ける。

「ああ。おやすみ」

返事は返ってくる。向こうをむいたまま。

後ろ姿は嫌いだ。

キュッ、と。
どうにもならない寂しさが込み上げてくる。
背中を見ていたくなくて、自分も背を向け、反対側を見る。
二人で寝るために用意したダブルサイズなのに、無駄に広く感じるくらい端と端にお互い離れた状態では体温も届かなかった。

‥‥‥寂しい。さみしいよ、土方。

俺は、自分を抱きしめるように腕をまわし、眠りに付いた。




カタカタとする物音に目が覚める。

「すまん。起こしちまったか」

くわえ煙草で準備をしている土方がいた。

「朝メシは?」

「適当にその辺ですませるからいいわ。お前はもう少し寝とけ」

そういって、チュッとキスをおとし、玄関に向う。

「じゃあ、いってくらあ」

「気ィつけてな」

布団の上で送り出し、溜息をつく。
最近、いや、もうずっとこんな感じだ。
これって倦怠期?
愛って、深くなると体の関係っていらなくなるんかねぇ。
イヤイヤイヤ、違う。
そんなんじゃない。きっと副編集長なんてのになったから疲れがたまってるだけだ。

そろそろと、朝で元気になっている自身へ手をのばし握り込む。
ゆるく前後に動かし、亀頭を人差し指でグリっと刺激する。
先からは蜜が溢れ出し滑りがよくなったところをさらに速度を早め、自身を追い立てていく。

「あっ‥‥ひ‥じか‥たっ‥‥ぁああっ」

白濁が手を汚す。

乱れた息が整う頃、虚しさが襲って来た。

「‥‥‥完全に欲求不満ですよ、コノヤロー。ん?それとも俺が淫乱なだけ??いやいや、健全な男子の反応だよ。うん」

汚れた部分を拭き取りながらぶつぶつ言ってみる。それさえも虚しくなり、もう一眠りすることにする。

せめて夢の中でもイチャイチャしたい。そう願いながら。



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あきゅろす。
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