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街の喧騒の中を土方を捜して走り回る。
「ったく。どこ行ったんだっつうの」
なんで俺、こんなに焦ってんだよ。
何、一生懸命になってんだよ。
アイツにはもうとっくに知れてたことじゃねぇか。ヅラや高杉と一緒になって戦ってたことはバレバレだ。
土方は口にははっきりとは出さないが、俺が攘夷戦争に参加してたことなんかとっくに知ってる風だった。
だからって何を言ってくるわけでもなかった。
じゃあなんで俺は焦ってるかって?
なんでだろうな。
ただ、アイツの寂しそうな顔が気になったから。
それだけでこんな汗だくになって捜し回ってる。
ったく。
こんなことになったのもヅラが昼間あんなもん持って来るからだっつうの!
******
「ごめんくださーい」
「はいはーい、と。‥‥‥なんだ、ヅラかよ」
「なんだとは冷たい奴だな、お前も。それにヅラではない、桂だ」
「わかったわかった。わかったからとりあえず中入れ。お前さ、お尋ね者っていう自覚相変わらず皆無だな。真昼間から堂々と」
玄関先で言い合ってるとこなんか真選組の奴らにでも見られたら、ややこしいことこの上ない。
「コソコソするなど性にあわん。今だってほら。エリザベスの着ぐるみをここまで着てきたのだ」
「‥‥‥コソコソしてんだろ、それ。つうか余計に目立つだろうがぁぁぁ!!」
「銀時、そんなに叫ぶと人様の目を惹くぞ。早く中に入れろ」
あーもう、コイツとしゃべってると時々血管切れそうになるっつうの。
こめかみを押さえながら万事屋へ招き入れた。
「んで?今日は一体何の用だよ」
「まあ、用と言うほどでもないがな。懐かしい物が出てきたから少しお前にも分けてやろうと思ってな」
懐から取り出したのは数枚の紙のようなもの。
首をかしげている俺にそれを差し出してきたので受け取る。
「おおーっ、写真?懐かしいな、これ!」
「そうだろう。お前にも渡してやろうと思ってたのをしまい込んで忘れていた。探し物をしていたら偶然見つけたのだ」
ヅラが嬉しそうな顔をして覗き込む。
いつだったか。
バカ本がどっかからか手に入れて来たカメラを持って、皆を撮って回ってた日があったっけか。
まだ攘夷戦争もそこまでは酷くなく、笑える余裕があった頃。
「戦争が終わって、みんなが笑えるようになったら現像するきー」
そう言っていたような。
あのカメラに収まった中で何人が生き残ってんだか。
そう思いながらもやはり懐かしい。
「‥‥‥あ、高杉」
「ああ、珍しいであろう?魂が抜かれるやらなんやら言って逃げ回っておったからな。お前が羽交い締めにして捕まえてるのを撮った、超レアなお宝写真だ」
「お宝写真て‥‥‥お前な、高杉はどっかのアイドルかっつうの。アイツもこん時はまだ表情あったのになぁ〜。あれ、でもいいのかよ、こんな珍しい写真貰っちまって」
「写ってるのはお前なんだからお前が持っておけ」
「ふうん。んじゃま、せっかくだから貰っておきますか」
二人であーだのこーだのしばらく昔話をしてると、あっという間に時間が過ぎた。
うおっと、やべぇ。
アイツが来ちまう。
ヅラに出掛けるからもう帰れと言って叩き出し、バタバタと写真やらなんやらグラスやらを片付ける。
今日は土方の非番の日。
神楽も上手いこと新八のところにお泊りになったし、夕方からゆっくりとする予定。
んなとこにヅラと遭遇した日にゃあ仕事に逆戻りだ。久々のまったりDayにんな無粋なことにはさせやしない。
わたわたと土方を迎え入れる準備をしていると玄関がガラガラッと開くのが聞こえた。
「邪魔するぞー」
待ち人来たれり。
その時俺は気づいてなかった。
慌てていたせいで、よりによってこの写真かよ、ていう高杉との写真がテーブルの下に落ちていたのを。
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