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涙が勝手に出てきて。
頭ん中がぐちゃぐちゃでどうしたらいいのかわからなくて。
俺は必死にそう叫んでいた。
責められていた指が抜かれ仰向けにひっくり返される。
「いいんだよ。お前は俺に、満たされとけ。お前にはその権利がある。辛かった分、生き残った分、他の奴らの分まで幸せにならないといけねぇんだよ」
間近にある土方の顔。
その言葉が遠い記憶と重なる。
『幸せにおなりなさい、銀時。辛かった分、あなたは幸せになる権利が多めにあるんですよ』
脚を抱え上げられ、熱いモノを身体の中に穿たれる。
ガクガクと内から揺すられれば、まるで土方の一部になったかのような錯覚。
「ひ、じかた。ひじかたぁ、俺、幸せ、なってもいい、の?」
「たりめーだ。お前がなんねぇと、俺もなれねぇよ」
「トシ‥‥俺に幸せ、くれる?」
「ああ」
「俺、お前に、幸せあげれる?」
「ああ」
優しく髪を撫でる土方はそれは優しい顔をしていて。
「俺、幸せ、なり、たい」
そう呟いたら、『勝手にしやがれ。先生とそいつの本気に免じてだからな。あとは好きにしろ』とどこからか拗ねた声が聞こえてきた気がした。
―――ごめんな、昔の、俺。
「任せとけ」
土方が、嬉しそうに笑った。
荒い二人の息遣い。
滴る汗。
受け止め切れない程の快楽。
俺の、何かを塗り替えていく気がした。
いつの間にやら誕生日なんてとっくに過ぎてて。
目が覚めた時には土方の腕の中。
寝てるかと思った土方は、起きてこっちをジッと見ていた。
「何見てんだよ」
「や、寝顔もかわいいもんだなあなんてな」
「ばっか!お前、今日ホントに変だぞ」
「言っただろ、誕生日くらい特別だって。それにお前が大丈夫か見張っとかなきゃいけねぇし」
「何のことだ?」
「さあな。ほれ、銀時口開けろ」
言われて何となく口を開けると、小さな玉を入れられた。
「あー、これうまっ。いちごミルク?」
「バタバタしてて何も用意出来なかったからな。取りあえず」
「んなもん、別にいーのに。こうして一緒にいれれば。あ、でもどうしてもっていうならパフェ一年分でも受けとってやるよ」
「ったく、オメェは。一年分は無理だけど、たまにならな」
「ちぇっ、土方のケチー」
「なっ誰がケチだ!一緒にいるだけでいいっつったんじゃねぇのかよ」
「わーった、わーった。じゃあもういわねぇから、さっきの飴もう一個ちょうだい」
「てめぇ、今度は俺より飴玉か?もうやらねぇよ。‥‥‥ああ、でもあと一つだけな。ほらよ」
口の中に広がる甘い味。
「サーンキュ!でもなんで?くれないっつったのに」
「まあ、お前に幸せやる約束がわりでな」
「ふーん」
わかったようなわからないような。
甘い香りと煙草の香り。
案外一緒にしても、相性いいんじゃね?
なあ先生、俺に誕生日をくれてありがとう。
こんな俺でも、幸せってやつを貰ってもいいのかな。
こいつが、くれるっていうんだ。
先生と、おんなじこと言うんだ。
幸せになってもいいんだってよ。
ありがとう、十四郎。
お前も、赦してくれてありがとう。
幸せも甘い気分も。
全部一緒に貰おうな。
一緒に、土方に幸せやろうな。
「たりめーだ。俺はお前なんだからな」
声が、胸に響いて暖かく消えていった。
20091010
→あとがき
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