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「ぐっっ」
「お前がいると邪魔なんだよ、土方十四郎。お前がいるとコイツが喜ぶ。あったかい気持ちになる。俺は、そんなの赦さない」
「な、んで、だ」
「俺の手は真っ赤に染まってんだよ。たくさんの奴らの魂が散ってった中で俺だけ生き残ってりゃあざまあねぇよな。俺が、幸せなんて求めちゃいけねぇんだよ。亡霊達がんなもん赦さねぇってしがみついてくんだよ。だから俺にゃあ幸せなんていらねぇんだ、お前なんていらねぇんだよ、土方」
ああ、コイツはやっぱり銀時だ。
傷付いて、体も心も散々ボロボロになった、攘夷戦争を生き抜いた‥‥過去の銀時‥‥‥白夜叉か。
「やっぱテメェ、馬鹿、だな」
「んだとぉ」
「銀時、生き残ったテメェが幸せになんねぇでどうすんだ。誰もお前に不幸なんざ望んじゃいねぇ、だいたい亡霊に足引っ張られるっつうんなら今頃俺もお前もここにいないだろ」
「うるさい!!お前に何がわかるってんだ!俺は!幸福感なんてもんは持っちゃいけねぇんだ!!」
「わかるさっ!!俺たちゃあ確かに沢山斬ってきた!重荷を背負ってる!だからって不幸にならなきゃいけねぇって誰が決めたんだよ」
「俺だよ」
そう言い切った銀時は今まで見た誰よりも苦しそうで、見ているほうが辛い。
「じゃあ俺が言ってやるよ。お前は、幸せになっていいんだ。いや、俺が幸せにしてやる」
「お、前、お前がんなこと言うから俺が出てくる羽目になんだよっ!」
刀が振り上げられる。
「銀ッッ!!!大丈夫だから、お前は俺と、幸せになれ」
「う、あ゛‥‥み、るな。俺を、みんじゃねぇっっ」
ゴトン、と頭の脇に刀が落ちてきた。
「銀?」
「‥‥‥土方‥‥‥」
確かにそう呟いて俺の胸へと倒れ込んできた。
「てめぇも難儀なもん、抱えてんな‥‥」
ホッとしながらその体を抱きしめる。
強さの裏にある脆さ。
戦争ってヤツは人の心をどれだけ傷付ければいいのか。
絶対、手を離しはしないから。
そう思いながらフワフワした頭に口づける。
届くだろうか。
さっきまでいたアイツにも。
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