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☆☆☆☆☆
目を開けると見慣れない天井。
ここ、どこだ。
視線を巡らすと黒髪の後ろ姿。
高杉?‥‥‥いや、違う。
「土方‥‥」
小さく小さく呟いたはずなのに、その背中がぴくりと動き、煙草を口にくわえたまま振り返った。
「起きたか」
「ここ‥‥‥どこ」
「俺の部屋」
「土方の?なんで俺、こんなとこいんの?」
「お前こそ、なんであんなとこふらふらしてたんだよ」
「俺?」
あれ?
俺、何してたっけ。
確かババァんとこでみんなに祝ってもらって‥‥それからどうしたっけ。
思い出そうとしても霞みがかってよくわからない。
「俺、なんかしてた?」
最近、極稀に。
まるで夢遊病者のようにふらふらとしている時がある。
知り合いに声を掛けられ気が付くパターンが多い。
特別何かをしてるわけではないので周りに害を与えてはいないが、気が付いたら違う場所にいるなんてのは気味が悪い。
それも、瞬間移動しているわけでもなく、自分の足で歩いているのだから、余計に自分がわからない。
ただ、息苦しさを感じたことだけは覚えている。
「なあ、土方。俺は、俺だった?」
「何言ってんだ?」
眉間に眉を寄せた土方がすぐ横に近付き、額に手をのせる。
「熱はねぇようだがな」
「んだよ、もういいわ、お前になんか聞かない」
人が真剣に聞いてんのに。
どうせ俺の言うことなんか、わけわかんねぇとかでも言って片付けんだろ。
ムッっときて唇を尖らせると、土方の影が顔に重なり、唇に軽く触れて離れていった。
「お前だったさ。俺の名を呼んだんだから、お前に決まってるだろう?」
そういった顔は鬼の副長という呼び名からはほど動き遠い、優しい優しい顔をしていた。
「なら、いい」
なんだか眩しくなって目線を逸らして布団を引っ被る。
ああ、なんでこんな格好いいんだろう。
女共がキャーキャー騒ぐのも当たり前だ。
赤くなった顔を隠す役割も持っている布団が思いっきり捲りあげられた。
「んだよ!なにすんだよ」
「で?なんでんなこと言い出してんだ?さては妖刀でも手に入れたか?ガキ共にゃあ今日は具合悪くてここに泊まるっといってあるからじっくり聞かせてもらおうかぁ?」
スパーと煙草の煙りを吐き出した土方はすっかり尋問モード。
さっきの甘い顔は何処へやら。
やはり、鬼の副長様の呼び名が似合う恋人に、背中に冷たい汗が伝うのがわかった。
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