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俺はよっぽど驚いた顔をして坂田を見つめていたのかもしれない。
自分でも、違うと言い聞かせながら蓋をしていた恋心を、見透かされてしまったということに動揺していた。
「瞳孔開いてるよ、先生。驚きすぎでしょ」
「な、んで」
「なんで知ってるか?それともなんでそう思うか?‥‥だって土方先生、俺に優しいもん」
その言葉を聞いて正直ホッとした。『優しい』だけならいくらでもごまかせる。
「優しいのは別にお前にだけじゃねぇよ。ちゃんとしてるやつには俺ぁ、優しいんだ」
「ふぅん。俺、全然ちゃんとやってないと思うんだけどな」
坂田は俺の答えに面白くなさそうに、口を尖らせて呟く。
たしかに。問題児視されるくらいだから、決して真面目とはいえない。
それでも。その芯の入った心根は人の心を引き寄せるものがある。
だから、余計に惹かれた。
「まあ、お前は‥‥‥その、例外だ」
何といていいのかわからずに、口ごもりながらそう答えた。
「例外?例外って、特別ってこと?」
キラキラと目を輝かせながら聞いてくるもんだから、眩しく思いながらもつい、頷いてしまう。
「まあ、そういうことになるな」
そういうと、嬉しそうに笑った。
先程とは違う、幼い子供の様な笑い顔に、思わず抱きしめたくなる衝動をぐっとこらえて、頭をぽんぽんと優しく撫でる。
ますます嬉しそうにする様子に俺も思わず微笑み、これ以上気持ちを悟られないように、薬を片付ける口実を自分に作り棚の方へと向かう。
「土方せんせー」
「あぁ?」
呼ばれて振り向くと、甘い香りがして唇に柔らかい感触が。
フワフワした銀髪が俺の顔をくすぐる。それ程近くに坂田の顔があった。‥‥‥ていうか、俺にくっついていた。
その感覚に呆然としていると、隙間から小さな舌が俺の口腔へと進入し、決して上手いとはいえない仕草でたどたどしく俺の舌に絡んでくる。
ジュッと何かが焼き切れた音がした。
その一生懸命な姿に、ついに俺は堕ちたのだ。
坂田の頬を両手で掴み、少し上をむかせてその舌を絡めとり、飢えたように口づける。
しばし、その柔らかい唇を貪り解放した頃には、坂田の息は上がりハアハアと肩で息をしていた。
飲み込めない唾液が口の端から流れ、紅く染まった唇にクラクラしながらも、やってしまっという念が頭をよぎる。
「せんせ?」
「これ以上したら‥‥もう、後には戻れねぇぞ」
半分は自分に言っているのかもしれない。
坂田の頬をなぞりながら、今度は逸らさずに紅い瞳を覗き込む。
「いいよ。だって俺、先生の一番特別になりたい」
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