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激情4

「お、おい」


言葉を発さず、紅い瞳からポロポロと流れる涙に、思わず怯んで髪を掴んでいた手を放す。
その途端に突き飛ばされ、逃げようとする銀時を後ろから追い羽交い締めにする。


「何だってんだよ!何でお前が泣いてんだよ!泣きたいのはこっちだろうが!!」

「土方だって、俺が断ったからって当てつけがましくキレーなお姉ちゃんとこに飲みに来ることないだろ!」


腕の中の銀色は確かにそう叫んだ。


「お前、俺がいること知ってたのかよ。 あそこからは俺らんとこ見えねぇだろうが」

「‥‥んなもんなぁ、モテモテ副長さんが来てりゃあ女達がキャアキャア騒ぐもんだからすぐにわかんだよ」


弱々しくいう銀時をかわいいと思ってしまう。


「俺ぁ、ただお前もつかまんなかったしぶらぶらしとしてたら松平のとっつぁんにつかまって付き合わされただけだって」

「ほんとか?‥」


首をまわして見てくる目はまだ涙に潤んでいて、それは綺麗な色をしている。
そのままキスしたい衝動を抑え、当初の怒りをぶつける。


「んなことより、お前のほうこそ富くじ当たったらしいじゃねぇかよ。俺の誘い断っときながらクラブで豪遊たあ、いい身分だなおい。おまけにアフターだあ?ふざけんじゃねぇぞ。俺の純情どうしてくれんだよ。女のほうが良いなら良いってハッキリ言やあいいだろ。それともあれか?お前得意の別腹か?正直に言ってみろや」


途中、眉間に皺を寄せて聞いていた銀時の手が俺の顔に近付き‥‥‥‥思いっ切り両頬を左右に引っ張られた。


「イテテテ‥‥‥っておい、なにふるんらよ」

「なにって??この、勘違い野郎にお仕置きしてんだよぉぉ!! 」


そう言うとますます頬を引っ張る指に力がこもる。


「ほぉい、ひてーって!」


やっと離れた時には頬がヒリヒリして手でさすると熱を持っているくらいだった。
目の前には腕組みをして仁王立ちしている銀時が。


「だーれーがー、別腹だってぇ?お前、俺が誰を好きか分かっててんなこと言ってんのか、コラ」


さっきまで、泣いてた兎は何処へやら。


「や、だってお前、見せつけるようにイチャイチャしてただろ」

「ああ、あれは土方に当てつけ。どうせおたくらあれだろ?接待だとか何とかであーゆうとこよく行くんだろ?お前のほうが女はべらしてること多いんじゃね??」


そう言われると、何も言い返すことができない。
確かに仕事柄副長ともなると、局長と二人で会合ついでやらなんやらでかり出されることも暫しある。


「だからって、お前みたいにあんなべたべたさせてるわけじゃねぇよ。こっちは仕事だ、仕事」


何となく勢いが削がれ、言い訳みたいになってしまう。


「ふーん。じゃあ言わせてもらうけどな。俺だってあれは仕事だよ、し・ご・と。だいたいお前んとこからはこっちが見えてもな、こっちからはVIP席にいやがるからお前が何してるかなんて全然見えやしねーんだよ」


あ、ミラーでこっちは見えないのか。
拗ねたようにしてる銀時の頭に手をのばすが、パシリと弾かれる。


「んだよ。女共にはさわらせといて俺はダメなのかよ」

「ダメだね」

「なんで‥。何でもねー奴にはさわらせて好きな奴にはさわらせねぇのか」

「ちゃんと謝れよ。俺だって仕事してる時ぁあんだよ。さっきの、あれは仕事」

「仕事だあ?女と飲んでヤリに行くのが仕事だっていうのかよ」


さわらせて貰えないことでイライラが再燃する。


「あれはな、あそこの店のママからの依頼なのぉ。あのお千枝って女が取り巻きも連れて移店するって話が出てるから、どこの店が引き抜きかけてるか探ってくれって。だから富くじなんて当たってないし、飲み代も全部店の金。信用させたらツケで散々飲んでばっくれるって訳。あーゆう店は個人のツケになるから俺が払わなかったらあの子の支払いになんの。ヤリに行くとか考えすぎだろ、不純だよお前。ま、俺もコマの一つなだけだけどね」

「お前、そんなこともやんのか‥‥」

「背に腹はかえれねーんだよ。うちにゃあ大飯食らいが一人と一匹いるからね」

「女の世界もこぇーな」


確かに、あのママならやりそうだ。優雅な笑みに隠された鬼を知り、寒気がした。


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