激情3
「おんやぁ、今日はやけに盛り上がってるじゃあないの。おじさん負けてらんねぇなあ。おいこらトシィ、お前ぇが難しい顔ばっかしてっから、お姉ちゃん達が楽しく出来ねぇじゃないのォ」
「‥‥すまねぇ。ちょっと厠に行ってくらぁ」
重い心を落ち着かせることが出来ず、厠に立つ。
鏡に写った自分の顔を見て苦笑い。
なんてぇ顔してんだ、俺。
とっつぁんに文句言われんのも当たり前だ。むっつりした顔でただ酒を煽る俺には、女達ももう話しかけることも諦めて酒作りに専念していた。
手を冷たい水で洗うと、握りしめているうちにくいこんだ爪の跡が少し滲みる。
冷えた両手を頬に当て、深呼吸をする。
そうして何とか多少は気を取り直し、席に戻った。
「トシィ、遅かったなあ〜喜べぇ、お前がいない間にカワイコちゃん達が増えたぞぉ」
確かに。
両手に花でご満悦のとっつぁん。
女達の数が倍に増えている。
増えてるってこたあ、料金もそれなりに行くってことだ。いいように店の作戦に乗せられている。
まあ、俺が払うわけじゃねぇからいいけど。
そう思いながら端に座り、気がついた。
目の前の女はさっきまで銀時の席についていた女だ。
視線を巡らせ、銀時の席を見ると、すでに片付けられ誰も座ってはいなかった。
「オイ、あそこにいたの、どこいった?」
「あぁ、お千枝さんのこと?残念ながら、もう上がりましたよ。私で我慢して下さいな」
席にいた女に聞くと、何を勘違いしたのかベラベラとそんなことをいってくる。
「一人でか?」
「いいえぇ。羽振りのいいお客さんとアフターらしいですよ。閉店まであと少しなんで、もう行っちゃいましたよ」
そう答える女は少し羨ましそうにため息をついた。
「とっつぁん、悪ィ。俺ぁ、この辺で帰らせてもらうぜ」
「え?おい、トシ?」
かかる声も無視して、足早に入口のドアを開ける。
まだその辺にいるはずだ。
お前は俺のもんだろ、銀時。
他の奴には女だろうが男だろうが渡しゃあしねぇんだよ。
俺は、銀色の頭を探してネオン街を走り回ることとなった。
−−−−−いた。
目立つ銀髪の後ろ姿。
その左腕には先程の女の腕が絡み付いている。
焦る心を抑え、乱れた呼吸を整える。
深呼吸をして、銀時達に近付き、その肩を叩く。
「よぉ。奇遇だな」
こっちを見た銀時は、そりゃあ驚いた顔をしてた。
何だよ、その顔は。
やましいことがあるから、んな顔してんだろ。
「あ‥‥れ、土方。その格好、そうか今日非番」
「おいアンタ、悪ィがちょっとこいつに用があるから借りてくわ」
言いかけた言葉を遮り、有無を言わさず銀の腕を女から奪い返してぐいぐい引っ張っていく。
「おぃ、ちょ待て、土方っ。あーもう!お千枝ちゃんごめんね。また今度ね−!」
俺といんのに、置き去りにしてきた女を気にして手を振ってる馬鹿にムカついて、腕を握る手に自然と力が入る。
「いい加減にしろよっっ!!いてーんだよこの馬鹿力!」
とりあえず路地裏に連れ込んだところで、腕を放した途端、この暴言。
カッときた俺は銀時の髪を掴み、そのまま壁に叩きつける。
「んだあ??その言い方は。非番の俺を断っといて女と浮気してるお前が悪ィんだろうがよ。他の奴に気安く髪さわらせてんじゃねーよ」
至近距離で睨み合い。
均衡が崩れたのはしばしの間のあと。
それも、銀時の涙で。
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