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「あ、あのぉ、もしもし?」

「何だ」

「何で俺達、こんなとこに二人でいんの?」


居酒屋の後連れてこられたのは、裏通りにある人目につきにくい茶屋。


「何でって‥‥溜まってんの解消してやるっていっただろ」


顔の両側に手をつかれ、壁際に追い込まれたことに冷や汗が出てくる。


「えーと、えーと。あ、わかった。後から女の子がくるとか?いやあ、気ぃ使ってもらって悪いね‥‥て、あれ?違う?」

「残念ながら違ぇな。俺とオメェだけだ」


至近距離でニヤリと笑い見つめられると、固まって動けなくなってしまう。


「や‥‥だなあ、冗談。まさか、鬼の副長さんが男の方がイイなんていわないよね」


口から声が上手く出ない。喉がカラカラする。


「いや?俺ァ、男とする趣味なんざ今まで持ち合わせたこたあ、ねぇよ」

「あ、そ、そうだよね」


そうして、俺から離れて上着を脱いでタイを緩めている。
−−−休憩に来ただけ?
ホッと小さく息を吐きながらも、チクリと胸に針が刺さったように感じる。
イテテ‥‥‥なんだよ、これ。
そんで、もっと訳わかんねーのはコイツ。


「オメェが悪ィんだよ」

「え?何?よく聞こえなっ、うわっ」


手を勢いよく引っ張られ、気付いた時には綺麗に敷かれた布団の上にボスンと体が沈んでいた。


「ぃてっ、何すんのっ」


布団のに投げ出された俺は、馬乗りにしてきた奴に両腕を固定された。

「はっきり言ってなあ、男なんざ全然興味ねーんだよ。だけどな、お前が目の前チョロチョロチョロチョロするお蔭でなあ‥‥‥俺ァ、俺ァ、お前ばかり目に入るようになっちまったんだよ」


なんだか、そんなに切羽詰まった顔をして見下ろさないで欲しい。
こっちまで苦しくなんだろ。
でもさ、今の言葉ってもしかしてさ。


「それってさ、愛の告白ってやつ?」

「ばっっ、そんな、対したもんじゃねぇよ」


みるみる間に顔が朱色に染まってゆく。
いつも怒ってばかりのコイツのが、いつもと違う顔を見せてくれていることにドキドキしてくる。


「多串くんさあ、そんなに俺のこと気になんの?」

「だから多串くんって誰だよ!俺には土方十四郎って名前があんだよ。‥‥‥名前で呼べよ」

「じゃあ‥‥ひじかたとーしろー。俺のこと、そんなに好きなの」


少し余裕の出て来た俺は、真っ直ぐに瞳を見返し、聞いた。


「ああ‥‥‥そうみてぇだ‥‥」


口付けが、降ってきた。
俺は瞼を閉じ、大人しく受け入れた。



胸の痛みはいつの間にか消えていた。



しばらくお互いの唇を貪りあった後、息を荒くしながら離れた。


「お前、キス、エロい」

「テメェもだろうがよ」

「ちげーよ。土方のキスがエロいから俺だってそうなるんだよ」


濡れた唇が更に淫らな空気を濃密なものにする。
開放された腕を土方の腕にまわし、囁く。


「続き、するんだろ」

「やっぱお前の方がエロいだろ」

「いったじゃん。溜まってるって」


もういいや。
このかわいい漆黒の人が手に入るんなら。
男同士だろうが。
例え酔っ払った勢いだろうが。
‥‥‥朝になったら目覚める夢だとしても。
一時の夢だとしても、今なら手に届く。
俺は自らかわいい人を胸にかき抱いた。


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あきゅろす。
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