3
「あれ?副長さんは?」
戻ってきたのに肝心の黒髪がいない。
「あぁ、奴なら仕事の連絡が入ったらしくて、ちょっと外してます」
答えてくれたのは栗色の髪の毛の一番隊隊長、沖田総悟。
その童顔に似合わず、剣の腕は真選組随一と言われるらしい。
「しっかしおたくらも大丈夫なの?」
「何がですかィ?」
「だってあれじゃん。いっくら分けてあるとはいえ、副長と総一郎くん二人ともいっぺんに来ていいわけ?」
真選組の柱が二本も抜けて大丈夫なのか?
「まあ、いざとなったらすぐ帰れる距離ですしねィ。‥‥‥それに万事屋の旦那も来るって聞いたんで」
そういいながら、どんどん酒を注ぐもんだからすっかりできあがって来た俺は随分フワフワと気持ちがよかった。
「沖田くん、そんなに俺と酒が飲みたかったの?んなもんいつでも言ってくれりゃーいいのに」
アハハと笑いが止まらない。酔っ払いの証拠。
「いやあ、そうしたいのば山々なんですがね、欝陶しい黒犬が邪魔なんでさァ」
ぶつぶついってる声はよく聞き取れない。
「えっ?なに?もっかい言って。銀さん酔っ払いだと耳遠くなんだわぁ」
もう顔も真っ赤になって、バシバシと沖田くんの背中を叩く。
「−−−旦那、風呂行きません?」
「えー?今から風呂ぉ?銀さん、もう酔ってるからなぁ。それにまだ飲みたいしなあ」
うーん、と悩んでいるとニッコリ笑った沖田くんはこう言った。
「今日は月が綺麗ですぜ。酒、頼んで露天風呂で月見酒もいいんじゃないですかィ」
「いーねー!よーし、その話、のった!!行こう!露天!月見酒!」
上機嫌な俺は沖田くんに連れられて宴会場を後にした。
☆☆☆
全く。
山崎の野郎、くだらねぇことでダラダラと質問してきやがって。
なんだってんだ、一体。
旅行の時くらい気を使えってんだ。
宴会場に戻ると、会場内は出来上がった隊士でいっぱいだった。
ぐるりと見回すが銀時の姿はない。
ついでにドS王子も。
近くの奴をつかまえ、尋ねる。
「おい、万事屋の野郎はどこ行ったんだ」
「あれ〜?さっきまでそこで飲んでましたよ。厠じゃないっすかあ」
酔っ払いをつかまえてもはっきりした答えは帰ってこない。
「なんか風呂がどうとかいって沖田隊長と出ていきましたよ」
教えてくれた隊士に礼をいい、踵を返す。
「あれ?副長飲まないんすか?ちょっと!副長ぉ〜!」
かかる声を無視し、足早に風呂の方角へと向かう。
こんな時にいい旅館を選んだのを自分自身で悔やむ。確か、大浴場が一つに、露天が二つ。
館内案内図を確かめ、俺は走り出した。
どこ行ったんだよ!銀時。
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