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カツーン、カツーン


地下へと続く石の階段を手元に持った揺らぐ蝋燭の明かりを頼りに一段ずつ下りていく。
ここは、十四郎の知らない秘密の場所。
俺にとってもいい思い出なんてあるわけのない場所で。
でもどうしても十四郎に渡したいものを、探して見つからなくって、もしかって思い付いたのがここだった。

だから俺は、かび臭い通路を降り鉄で出来た重い扉を押し開けた。


「ケホッ」


中は蜘蛛の巣やらほこりやらとで寂れてはいたが、その空気はなんら変わっていない。


−−−−−血と、肉と、狂気の香


頑丈な鉄格子の牢があり、その中には身体を拘束するためのこれまた頑丈な枷がゴロリところがっている。
鉄格子の前には簡単な手術台のようなもの。そのまわりには様々な器具が。
時には血液をとるだけのものや肉を捌き命を絶つ凶器まで様々だ。

そこに苦々しい目をちらりと向けながらその奥へと進む。
奥には小さな机と薬品類がいれてある棚やベッドがあった。
ベッドの壁にくっついている方の下の部分、自然にみせかけてあるが実は切れ目がいれてあるそこに指をいれて探ると、指先に固い感触を覚える。


「あった」


チャリ、と中にあったものを静かに手の平にのせる。


「よかった」


これを隠したのはこの部屋に初めて連れられて来た時。それ以来確認していなかった。
だって解放されたときにはそんなことはどうでもよかったから。
だから、正直忘れていた。

でも俺には必要なくてもきっと十四郎に役に立つときはあるだろう。
だからここまで探しにきた。
これで用事は終わり。
さっさと部屋から出ようとした俺は、鉄扉のノブを回すとおかしな音がしたのに気付いた。


「ぐッッッ」


避ける間もなく三本の矢が、肩や腰、足に突き刺さる。


「ち、くしょ、」


油断していた。
トラップはもうないもんだと思ってたが、あの時はあの人が解除してくれただけでトラップは有効ってか。
そうだよな、助け出したやつがここに戻るなんて有り得ねぇことだしまして変な輩が侵入したとしたらここの惨状はすぐに警察行きだしな。
でも、ちょっとこれ、やり過ぎだろ‥‥対、人間用じゃないじゃん。

多少のことでは大丈夫なはずの自分の身体がだんだんと動かなくなるのを感じ、のこりの力でドアの外へ出、階段を一段のぼったところでぶざまに倒れ込む。



「十四郎‥‥‥」


呼び声は地下通路に微かに響いて、


そして、消えた。


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あきゅろす。
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