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暗闇に舞う雪が綺麗だ。
雪は嫌いじゃない。
この手にこびりついて取れない血も、汚れも全て隠してくれる気がする。


冷気が入り込むのにも構わず、舞い落ちる雪を眺めながら自室の窓を開け放して酒を飲んでいた。

スーッ、と襖が開き万斉が顔を出す。


「いま戻ったでござるよ、晋助」


雪道をそのままバイクで走って来たのか、頭の上に雪が積もっている。トレードマークのツンツンした髪の毛もへたれて見る陰もない。


「随分と早いお帰りじゃねぇか」

「毎回毎回晋助に寂しい思いをさせては、と今回は根回ししてちょっと頑張ったでござるよ」


褒めて、と言わんばかりのその様子に顔が緩みそうになるが、ここでそんな顔なんか見せたら自分のほうが分が悪い気がして嫌だ。


「別にてめぇが居ようが居まいが気にしてねぇ。それよりボタボタ水が落ちてんぞ、近寄んな。風呂でも入ってしっかり拭いて来い」

「わかったでござる。全く晋助は素直でないな」


万斉は大人しく言葉に従うのか、スッと立ち上がり部屋を出ていく。


「ところでせっかくのクリスマスだというに祭り好きの晋助らしくない。飾り付けとか宴会はしないでござるか?」


思い出したかのように振り返り、そう聞いてくる。濡れた長い前髪を掻き上げる仕草が、男のくせにやけに色気があって嫌になる。
手元の酒をゴクリと喉に流し込み、口を拭う。


「クリスマスかなんかしんねぇけどよ、どっかの国の行事なんだろ?んなもんにゃあんまり興味ねぇ。俺ァ酒がありゃいいからなんかやりたいんだったらてめぇらで勝手にやんな」

「ふむ‥‥‥ということは好きにしてよいということでござるな」

「あぁ、俺は部屋に居るがな」

「とりあえず、湯を浴びてくるでござるよ」


小さくパタリと襖が合わさり、部屋の中にはまた俺一人。

本当は。
万斉が早く仕事を切り上げて来てくれて嬉しい。クリスマスだ何だも異国の風習だのなんだの、こだわらなくったって派手にやりゃあいいと思う。
ただ、今回はお前が居ないと思ったから気乗りがしなかっただけだ。
こんなことはお前にはいえないがな。こんな弱音みたいな言葉、総督の俺が言えるわけがないだろう。

なあ、そうだろうがよ。
俺は常に強くないといけねぇんだ。






*****


「晋助様、晋助様」

「んあ?」


外から掛かる声に意識を戻される。
風呂へと行ったまま、しばらく待っても帰ってこない万斉に、少しふて腐れながら待つうちにウトウトしてたらしい。


「来島、なんか用か」

「河上が晋助様に来て欲しいっていってるッス」


万斉が?


「てめぇの足でこっちにくりゃあいいだろうが」

「いやそれが、どうしてもって言ってるんス」

「‥‥‥わかった」


なんか問題でもおきたか?
訝りながらも来島の後へとついてゆく。


「晋助様、開けるッスよ!」


意味深な来島の言葉。
そこは甲板へ続く船内との仕切の扉。
この先に問題があんのか?


「さっさと開けろ」

「はい!」


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あきゅろす。
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