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「晋助、手」
「‥‥‥別にいい」
「晋助?」
不思議そうな顔をしてるが無視して歩く。
真っ暗な帰り道。
狭い路地で人通りもないこの道で、手を繋いだとしても誰も咎める者などいるはずもない。
正直いうと実は繋ぎたい。
三日前にダメ元で告白したら、すんなりと受け入れてくれた。
そんな俺ら二人。
出来れば万斉の好みに近付きたいって思うもんだろ?
万斉に嫌われないように。
もっと好かれるように。
それで、手を繋がない。
だってコイツの好みは、大人の女。
女になるのは無理でも中身を近付けるくらいは努力しねぇとな。
だから、ガキっぽいことはしないことに決めたんだ。
*****
「万斉‥‥‥俺、お前が好きだ」
その日、俺は煮詰まってたのかもしんねぇ。
屋上で寝っ転がりながらつい、想いを口にしてしまった。
「拙者も晋助のこと、好きでござるよ」
隣で胡座をかいて楽譜を見ていた顔が、俺のほうを向いて優しい声でいう。
「や‥‥‥そういう意味じゃねくて。俺のは万斉が言ってんのと、多分、ちげぇよ」
一度口に出したからには流すのも嫌で、悲しくなりながらもそう言い直す。
「はて。‥‥‥では、付き合うとかいう意味での好きでござるか」
手を止め、じっと見つめられるが万斉の目は濃いサングラスで伺えない。
「え?‥‥あ‥‥‥ああ。まあ、そんな感じだ」
居心地の悪さを感じながら、目線をそらして渇く口内から言葉をだす。
やっぱ、こんなこといつも一緒にいる奴に言われたら気持ち悪ぃよな。
万斉を横目で見ると、何やら考えてる様子。
やべ、なんで言っちまったんだろ、俺。
沈黙の空気が重い。
なんとかしないと。
冗談だ、とかでも言っとっか?
「おい、万さ「いいでござるよ」
「は?」
「だからいいでござる。拙者と晋助、付き合うでござるよ」
「‥‥‥マジ?」
「まじでござる。晋助は、嫌?」
ニコリと笑いかけられればそれ以上、何もいうことは出来ず。
夢じゃないかと想いながら首を横に振った。
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