7 愛のうた
「‥‥‥これで帰んのか」
「そうでござる」
万斉愛用の、大型のバイク。
乗ってるところは見たことはあるが、自分が乗ったことはない。
その前に‥‥
「どうしたでござるか?‥‥‥あぁ、もしかしてここが心配?」
そういって尻の辺りを撫で回される。
「さわるな!変態!」
「ひどいでござるな。昨日はあんなに愛しあったというのに。今日も晋助の為に仕事をほっぽらかしてきたというのに‥‥」
シュンとする万斉に、らしくない、絶対わざとだとわかってはいるが、今日来てくれたことは嬉しいので素直に謝る。
「わ、悪かった」
「じゃあ今日は拙者が楽しむほうで」
「‥‥‥何が」
「今日も朝まで寝かせないでござるよ」
「いや、無理。絶対、無理。てか調子のりすぎだろ」
少し、言ったことに後悔。
「まあ、それは後からの楽しみでござるよ。とりあえずは帰ろう。皆、まっているでござるよ。なるべく振動がこないようにゆっくり行くけど、しっかり掴まって」
発進する鉄の塊。
しっかりと万斉の腰に腕を回してしがみつく。
「しーんすけー」
街中の喧騒を抜け、風を切りながら運転している万斉が正面を向いたまま声をかけてきた。
「あぁー?」
バイクの音と風の音にかき消されないように声を張り上げる。
「たんじょーび、おめでとうでござるー。拙者、晋助が生まれて来てくれたこの日に、感謝でござるよー!」
‥‥‥‥‥そんなこと、生まれて初めて、言われた。視界が滲んでるような気がしたが、多分風のせいだと自分に言い聞かせる。
俺も‥‥‥お前に会えて、お前がこの世に存在していて感謝してるっつの。
返事は返さずに、万斉を抱きしめるようにくっつく。
そしたら。
〜〜♪
聞こえてきたのは万斉の鼻唄。
先程の女が歌っていたうただ。
あの女や眼鏡には悪いが、俺には万斉の声が一番。
優しく甘いバースデーソングに低音の心地好い歌声。
今まで、万斉の仕事にはさして興味がなかったが、こんな万斉もまた嬉しい。
もらっといてやらぁよ。
お前の心からのプレゼント。
ありがとう、万斉。
終
20090810
HAPPY BIRTHDAY 晋助
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