6 万斉登場
「ちょっとォォオ!来るのはいいけど靴ぐらい玄関で脱げつってんだろうがあ!!毎回毎回!高杉ィ、ちゃんと教育しとけって前も言っただろ!なってねーぞ」
「えーっ!!!つ、つんぽさんんん?ほんとに?なんでぇ!!!」
飛び交う大声の中、俺だけが言葉を発せずに固まっていた。
「だから晋助は」
「高杉ならそこにいっからとりあえず靴脱げ!靴!!」
お茶を持ったまま固まっている俺を見て、万斉が頭を捻る。
「晋助!」
「うおっ、あちぃっ」
ガバッと抱きつかれた勢いで湯呑みの中の茶が跳ね指に少しかかった。
その熱でハッと気を取り直す。
「す、すまぬ」
「何でお前がここにいるんだよ、万斉。今日は一日仕事で帰って来れねぇつってたんじゃねぇのか」
「だから白夜叉のところに来たという訳か?」
率直な疑問をぶつけただけなのに、万斉の目がサングラスの奥でスウッと細まり、冷たい声で逆に問い詰められる。
「た、たまたまだ」
「怪しい‥‥」
「何がだよっ、そ、それより何でここにいるのがわかったんだよ」
何となく後ろめたい気がして話をそらすのに懸命になる。
「何でって。メールに決まっているでござろう」
黒いコートのポケットからゴソゴソと黒い携帯を取り出し、中を開いて見せるもんだから手に取り見ると。
『受信メール
晋助
;Re
高杉なら誕生日なのにさみしいって俺んとこに来てるよ。体も心もたっぷり癒してあげてるから、君は頑張って仕事してなさい。G 』
「なっ、んだこれぇぇ!!銀時ぃ!!!」
「いいじゃん。そんなかわいい、いたずらくらい」
「なんだ?それに拙者、まんまと騙されたというわけか」
「おま、仕事大丈夫なのかよ」
「大丈夫じゃないでござるが‥‥‥理由を作って、今日はもう来れぬと言って出てきたので心配ござらんよ」
優しい顔に戻った万斉。
「あ、あの、つんぽさんですよね!さっきテレビ出てた!」
「そうでござるが、主は?」
「はい!ここで働いてる志村新八といいます!寺門通親衛隊隊長をやっておりますであります!」
「ほう。お通殿の」
なんだよ。俺に対する態度とはえれぇ違いだな。万斉に向かって直立不動で吠えている。
「ああ、そいつ酒買いに行ったりツマミ作ってくれたから何か礼しといてくれ」
「なに、それは晋助が世話になったな。何か‥‥ああ、よかったらコレ。お通殿の未発表の新曲のデモでござるが‥」
「えぇっっ!ほ、ホントにいいんですか!!」
あんなもんでマジで喜んでやがる。やっぱガキだな。
「よかったな。兄ちゃん、今日一緒にいられんじゃん。うちの新八も喜んでっし。いやあ、たまにはいいことするってのもいいね」
万斉と眼鏡の様子を見ながら、楽しそうにニヤついている。
「銀時、お前‥‥」
「さ、晋助。もう艦に帰ろう」
「あ、ああ。そうするか」
玄関に向かうが銀時はソファに座ったまま。
「ぜひまた遊びに来て下さいね!高杉さんも」
ニコニコと上機嫌で送り出す眼鏡。
さっきまでとはえれぇ違いだな、オイ。
僅かに見える銀髪に向かって声をかける。
「銀時ぃ、今度来っときは礼に甘味買ってきてやらぁ」
そういうとソファの向こうから手をヒラヒラと振っている。
「礼とはなんのことでござるか」
「あ?あぁ、あれだよ。前に倒れた時の礼だ」
「そうでござるか」
あまり納得してない風だがこれ以上言う気はない。
お前を呼んでくれた礼だなんて。
「じゃあな」
そうして万事屋を後にした。
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