4 テレビの中の君
「今日はつんぽさんの大事な人のために歌わせてもらいます」
そう言って女は歌い始めた。
ギター一本だけを使ったシンプルな音源にのせて、優しい唄が流れてくる。
『受けとって、このSong‥』
万斉の作った歌はいつもシャカシャカと煩いイメージがして聴いたことがなかったが、この歌は心地好いものだった。
歌が終わって口を開いたのはやっぱり眼鏡。
「いい歌でしたねぇ。お通ちゃんの歌としては異色の感じがするバラードですが、なんか、心に染み入るものがありましたね」
「あの顔はどっかで見たことあるよなあ、高杉。なかなかいい仕事すんじゃねぇか、あの兄ちゃんも。ま、公共の電波使うなんてやり過ぎだと俺は思うけどな」
ニヤニヤと笑いながらこっちを見ている。
「うっせぇよ。その笑いやめろ」
そう、言いながらも顔が熱くなっているのを感じる。
「え?銀さんも高杉さんもつんぽさんのこと知ってるんですか?!」
「‥‥‥まあな」
「つーか、あのグラサン高杉んとこの奴だぞ。なんで堂々とテレビなんか出てるんだよ」
「えーー!!!あ、あれ、つんぽさんですよ!お通ちゃんの曲作ってる!なのに鬼兵隊?え?」
「あいつは鬼兵隊入る前からそうゆう仕事もしてんだよ」
マジで驚いてパニクってる眼鏡は放っといて、携帯をじっと見つめて悩んでしまう。
「オイ、銀時。これ、返事返すのってどうやりゃできんだ」
万斉のメールを見たままの画面を銀時に見せる。
「んだあ?お前なあ、そんなことぐらい教えて貰いなさいよ」
「苦手なんだよ、こんなちまちましたもん。だから早く教えろよ」
銀時の目の前で携帯をぶらぶらさせていると、携帯を奪われる。
「今すぐなにを送りたいんだって?言ってみろよ。お前に教えてたら時間の無駄だから俺が打ってやるよ」
ま、まあそのほうが簡単でいいか。
本当なら直接声が聞きたいところだが、なにせ相手はTVに出演中の身だ。
「じゃあ、えーと、”ありがとう”って送ってくれよ」
「ほいほい。”ありがとう”ね。お前もかわいいとこあんじゃん。待ち切れないってか」
ピピピピピピピピ‥‥‥
「出来たよ。送っとくな」
「おい。今やけに字が多くなかったか」
「ん?気のせい、気のせい‥‥‥‥‥‥‥‥‥寂しがりやの晋ちゃんに俺からのプレゼントだよ」
何やらボソボソと言っていたが聞き取れなかった。
「それより、俺ぁそろそろ帰るぜ」
そういった俺の目の前を銀時の腕が塞ぐ。
「まあまあ、そんな慌てんなよ」
「あぁ?いってぇどんな風の吹き回しだ?」
さっきまではあげるのも嫌がっていたというに。
訝しげに銀時を見ても、いいからいいからと言われ再び席に座らせられる。
チャッチャッチャーラリー♪
携帯からは今度はいつもの着信音が。
着信相手は、万斉。
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