つたえたいことは
ズンズンズンズン、ものも言わずに、手を引いて前を歩いていく。
「おい」
返事はない。
「おい、万斉!つっ、ぃたっ」
大きな声を出したら、やはり頭が痛んだ。
「晋助っ?痛むでござるか」
先を歩いていた万斉がやっとこちらを振り向く。
「平気だ。それよりどこに行くんだ」
先程からの疑問をぶつける。船とは全く別の方向へと歩いているからだ。
「すまないでござる。今から拙者の借りている部屋に行くでござるよ。すぐ近くでござる」
「お前の、部屋?」
「そうでござる。書類も多少取りにいかなきゃならんし、晋助もまだ本調子ではないのだろう?近くだから休んでいくとよい」
手は握ったまま。
今度はゆっくりと隣を歩いてくれる。
もう夕暮れとはいえ、男同士が仲良く手を繋いで歩くのは恥ずかしかったが、力強く握りしめられた手を振りほどけはしなかった。
むしろ、嬉しいなどと思ってしまう自分がいたりして。
横に歩く万斉に悟られぬように、仏頂面になるのであった。
「ここでござる」
洒落た感じの高層マンションの一室だった。万斉らしく黒で揃えられた家具が並び、あまり生活感のないシンプルな部屋だった。
俺の知らない万斉の居場所。
「‥‥‥晋助」
後ろからギュッと抱きしめられる。
「心配したでござるよ」
肩に顔を埋められる。
「お前がっ!万斉のくせに俺の傍にいねェのが悪いんだ」
「‥‥‥‥え」
そうだよ。
もとはといえばいないから捜しにでたんだ。
「で、でも、拙者が仕事で留守にするのはよくあることでござろう?なんで今日に限って‥‥‥‥‥−−あ」
今日に限って、だよ。
あーなんだか顔が熱い。
「晋助、耳が赤く見えるのは気のせいか?」
クスリと耳元で笑われる。
「こっちを向くでござる」
渋々振り向くが万斉の顔を見るには釈にさわるので、目線をつい逸らしてしまう。
「もしかして。拙者の、誕生日、だから?」
ちらりと見ると、嬉しそうにしてる万斉がいる。
「お前、仕事で長く空けることも多いだろ。祝いくらいは言いてェだろうがよ。一応‥‥‥だし。」
最後の語尾が小さくなってしまう。
「え、何て言ったでござるか?聞こえないでござる」
ニコニコして聞いてくる。絶対、聞こえてるだろ。
「早く、もう一度言って 」
「一応、付き合ってる奴の誕生日くらい祝いたいっつってんだろうが!」
もう、やけくそになって大きな声で怒鳴る。
痛みが頭に響いた。
「晋助!!!晋助からそんな言葉が聞けるなんて拙者感激でござる!!!」
「そ、そうか」
恥ずかしいこと言わせやがって。
「あ、そうだこれ」
「なんでござる」
着物の袂から例の物を取り出す。
「お前にやる」
黒いものを渡す。
「これは‥‥携帯電話?」
「あぁ。今日みたいなとき困るし。ただし、俺専用にしとけよ」
「晋助‥‥!もう我慢できぬ!!」
「えっ、ちょっ!うわっ」
「体調が良くないようでござるから我慢しようと思っておったが、かわいい姿をいっぱい見せられて無理でござる!」
いわゆるお姫様抱っこされてむかったのは、布団の引いてある、おそらく寝室。
「いっぱい愛し合うでござるよ」
甘く耳元に響いた。
やっぱり、俺、病気かも。
→次頁はエロ入ります。注意!!
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