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最近、晋助の様子がおかしい。
話し掛けても、時々、上の空。
それどころか、何か拙者、避けられている気までしてくる。
この間まではしょっちゅう呼ばれては、あれやこれやと言いつけ、相手をしろと言われておったのにここ数日それもない。
用事があれば来島殿が動いているようだ。

拙者、何か無礼なことでもしたであろうか?

体を重ね、同じ時を共有する時間が多くなり、晋助の近くにいて気付いたこと。

言葉とは裏腹に、非常に傷付きやすく繊細な一面がある。
それ故に苦しみ、自身に枷をつけているような気がする。

−−−何より、寝ている時に静かに流れた涙は胸が痛くなるほど辛そうな表情をしていた。

戦争は、どれ程のモノを晋助から奪ったのか。

側にいなかった自分が口惜しく、共にあった者たちに嫉妬する。

そして、今の晋助を守りたい。強く、強くなって晋助の側でずっといれるくらいになりたい、と願うほどになった。
愛しい‥‥‥と思ったのはその頃だったかもしれぬ。
自分の感情に気づいてからは、尚一層晋助に尽くしてきたのに、突然。

やはり、避けられている。

もやもやとしていても性に合わないので、直接、話をすることにした。


「晋助はどこに?」


その辺の者を捕まえ尋ねる。


「先程、甲板のほうでみました」


と、いうので行ってみるが誰もいない。
自室に戻ったのかと見に行ってみるがやはりいない。
見落としたのだろうか。
それとも、拙者から逃げているのであろうか。
後ろ向きな思いを振り払い、もう一度甲板に足を向ける。


「さっきから何してんだ、おめぇは」


声がしたほうを振り向くと、積み上げられた大きな木箱の荷の上で月を背に座っている姿が見えた。


「晋助を探していたでござるよ。いたのなら声をかけてくれればいいのに」

「なにやってんのかわかんねぇから眺めてた。お前こそ、名前くらい呼べよ」

「そうでござるな。何をしていたでござるか」

「月見だ」

「確かに今宵は見事な満月。‥‥‥だか、そちらにおっては話辛い。ここに降りてきてはもらえないか」


月の光りが邪魔をして表情が窺えない。

しばしの間の後、フワリと体が月に浮かび、天女が舞い降りたかのように
地に降りた。


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