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さがしものはなんですか

「万斉はどこだ」

「あ、晋助様あ!河上ならなんか表の仕事がどうので出てるっす」

自室を出て、うろうろとしていたが見かけなかったので、来島に聞いた。

「そうか‥‥いつ戻るとか聞いたか」

首を横に振る。

「なんか用がありましたか?また子でよかったらなんでも言って下さい!」

犬が尻尾を振ってる姿を思い出す。

「いや、たいしたことじゃねぇ。いねぇならいい」

「帰って来たら晋助様が用があるからって伝えておきますからあ!」

任せて下さいとばかりに満面の笑みを浮かべている。

「ああ。‥‥‥いや、やっぱいらねぇや」

疑問を浮かべた顔を置いて、自室に戻る。

シン、とした部屋はいつもながらのことだか、なんだか今日は落ち着かなかった。

時間がたつのがやけに長く感じられ、街にでることにした。

「少しでてくらぁ」

一人で出るのは危険と言う声を振り切って、街に出た。



青空が−−−目に浸みた。

夜の闇に馴れ切っている自分にはなんだか不釣り合いな気がした。

自分だけ、この平穏な世界から切り離されているように感じた。

ぐるぐると世界がまわり、脂汗が出て、吐き気まで襲ってきた。
立っているのも辛くなり、壁に手をついたところに後ろから声が掛かった。

「高杉?」

ちらりと見ると、ヅラが不思議そうな顔をしてたっている。

「なんだ、ヅラかよ」

「ヅラではない!桂だ!って、お主、具合が悪いのか?」

全く。相変わらずぬるい奴だ。

「生温い世の中に吐き気がしてただけだ。お前こそ心配してんじゃねーよ。俺ァお前の敵だろ」

「一人でいるお前に何が出来る。具合が悪ければ尚の事。それに、病人ともなれは手を貸してやりたくなるのが人の道理というものであろう」

「はっ!相変わらず‥‥‥」

甘ェな。

「おい!晋助!‥‥!」

意識が、落ちた。
ヅラの声さえも遠くなり、視界は暗闇に包まれた。そして俺は崩れ落ちた。





目を開けると見慣れない天井が目に入った。

ハッと気付き、起き上がろうとするとズキンと頭が痛み、もとの位置へとまた突っ伏した。

「どこだ、ここ」

ズキズキと痛む側頭部に手をやりそっと見回す。

やはり見覚えのないところだ。

スッと襖が開き、桂が顔を出した。

「起きたようだな。倒れた時に多少頭を打ったので痛いであろう」

「ここは何処だ」

「銀時のところだ。近くだったのでな」

チッ
なんてこった。更に昔馴染みのもう一人までこんな姿を見られるとは失態だ。
まあ、今回は助かったのだが、弱ってる部分を見せるなどもっての他だった。

「礼はいわねぇ。お前が勝手にやったことだしな」

「はなから礼を貰おうなどとした訳ではないから気にするな」

話していると違う部屋から何やら騒がしい声が聞こえてきた。

何事かと利き耳をたてていると、見知った声が聞こえた。

「早く晋助を出すでござる!!!」

−−−万斉?!

「なにやら穏やかではないな」

桂がのんびりと言う。

まだ痛む頭を片手で押さえ、声の聞こえるほうへと向かう。

やはり万斉だ。
玄関先で銀時と睨み合っている。

「万斉、落ち着け」

頭が痛むので大きな声は出せず、語りかけるように声をかけた。

「晋助!!大丈夫でござるか!」

土足のままバタバタと駆け寄ってくる。

「ちょっとおォ−!人ん家はいんのに靴脱がないなんて、どこの外人ですかコノヤロー!!高杉ィお前、しつけ悪いんじゃないかぁ?」

銀時が額に青筋たてて何か言っているが、無視する。

「何でお前がここにいる」

人目をはばからず、抱き着いてこようとした万斉をかわしながら声をかける。

「拙者は晋助が白夜叉に捕まったと来島殿に聞き、飛んできたでござる」

「あぁ?違ぇよ」

はーっ、と思わず溜め息がでる。

「だからいっただろ!俺ぁなんにもしてねぇって!!」

ほら見ろとばかりに銀時が万斉に詰め寄る。

「まあまあ二人とも。ここで争っても栓無きことであろう。落ち着いたらどうだ」

「だいたいなあ!ヅラ、お前が高杉なんか連れて来るからこーなんだぞ!今彼のとこに元彼連れてくるなんてどーゆーこと?!」

「ヅラではない。桂だ!仕方ないであろう。ここが近かったのだ」

−−−あれ?今、なにげになんか言ってなかったか。そうかこの二人‥‥

「晋助ェェェエエ!!今のは!今のは本当でござるかっ?!!やはり拙者の睨んでいた通り、何か関係があったのでござるな!」

あーうぜー。
なんかややこしいな。

「どっちでござる!白夜叉か?桂か?どっちが元彼でござる?」

詰め寄る万斉も暑苦しい。

フゥ、と息はく。自分より高い位置にある首に手をまわし、引き寄せ、口付ける。
ニ、三度唇をはさみ舌を絡ませ、味わってからチュッと軽く音をたてて離す。

「今はお前だけだろ」

「あ、あぁ」

万斉だけではなく、他の二人にも効果はあったようで静かになった。



「−−−で、倒れた晋助を運ぶのに万事屋が近かったから運んで、鬼兵隊のほうに連絡したのだ」

万事屋の中、テーブルを挟んで向かいあい、ヅラの説明を聞くことになった。
すぐにも帰ろうかともしたのだが、万斉が納得しなかったので今の状況だ。

「それでなんで俺が拉致られたっつーことになってんだよ」

「そうでござる。拙者の方には確かに晋助が捕まったと連絡が来たでござる」

「ね、お前さ、どーゆー風に連絡したわけ」

「うかつに近づくとうちの手の者がやられる可能性もあったからな。矢に手紙を付けて放つよう指示したのだが」

‥‥‥‥。

「こ、小太郎ちゃん?その手紙って、なんて書いてあったの?」

「ああ。確か、わかりやすく『高杉は万事屋で預かった。取引には河上をよこせ』だったかな」

「オィィィイ!!それって普通に違うだろ!!!立派に誘拐犯の手紙だよ!銀さん、高杉なんか誘拐した覚えないしっ!っつーか、何で取引?なんの取引したいんですかお前は!!」

「あ、間違えた。取引じゃなくて、引き取りにこいが正解だったな」

淡々といってのけるヅラに対して、銀時がガクンと肩を落としている。

相変わらずだな。二人とも。

「で、なんで万斉ご指名なんだ」

気になる。

「ああ、それは単に、殺気だった連中がぞろぞろと迎えに来るのが嫌なだけだ。かといってお主の様子からしたら多少なりとも腕の立つ奴に迎えに来てもらわんと、何かあったときに心配だったのでな」

「−−−はっ!心配だと?笑わせるな。相変わらず甘ェ奴らだな、揃いも揃って。」

本当に。

「行くぞ、万斉」

「うむ」

事態も把握出来たし、長居する必要はない。いたらまたややこしいことになりそうだ。

「おぅ。さっさと帰りやがれ!今日の御休憩代は駅前の甘味屋の新作ケーキホールでいいかんな−」

「んなもん、やるわけねーだろ。話しをややこしくしやがって」

「いつでも遊びに来い」

「ヅラ、今度会ったときはそんなこといってらんねぇぞ」

そう言葉を残し、万事屋を後にした。

吐き気は、いつのまにか消えていた。

万斉には会えたし、気持ちは軽かった。


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