7 蜜月
久しぶりに触れ合う肌の感覚にクラクラする。
唇を合わせれば、さっき 傷付けた血の味がして。
酷いことをしたかもしれないと、ペロペロと傷らしきモノを舐める。
「まるで、猫でござるな」
クスリと笑われ、深く口づけされる。
唇は器用に、首筋、胸の突起へと下りて、快楽にへと導いてゆく。
まだ朧げにしか見えない目では、少しでも肌が離れると不安になる。
かといって、刺激を与えられれば感覚が研ぎ澄まされているせいか、いつもより敏感に反応する。
「ば‥んさい、手、手ぇ、握ってっ」
求めれば、与えられる幸福感。
「晋助、今日はやけに感じやすいでござるな。目が見えぬからか?それとも‥‥しばらくしてなかったから?」
そんな恥ずかしいこと聞くなと思ってるのに、口から出るのは違う言葉。
「ん‥‥りょ、うほう」
「晋助っ、かわいい」
「んんんんんっっ」
クリクリと舌先で転がされていた胸の蕾をキュッと吸われる。
「でも少々痩せたな。‥‥‥目が見えなくなるほど、拙者のことが好き?」
だから、こんなときに聞くなよっ。
でも熱に侵されている俺はやっぱり答えてしまう。
「す‥‥き‥万斉、好きぃ」
「晋助、拙者もでござるよ」
甘い甘い言葉が降ってくる。
もちろん、それは始まりなだけで。何度も突き上げられお互いの欲を吐き出し、離れていた時間を埋めるように長い時間抱き合った。
目を開けると、万斉の顔が、アップですぐ近くにあった。
腕枕をして、俺を抱えるようにして眠っている。
切れ長の目は伏せられていて、睫毛が思いの外長い。
「万斉だ‥‥‥」
呟くと、目がゆっくりと開いた。
「ん‥‥晋、助?」
寝ぼけているのか、無防備な子供のような笑顔を見せる。
「ん?顔?あ‥‥万斉が、見える」
まじまじと見ていると、チュッと音を立てて、軽くキスをされる。
「こうやって朝に晋助の顔を見れるのは拙者の特権でござるよ」
「いや、そうじゃなくて。目が、見えてる」
「本当でござるか」
「ああ」
驚いた顔の万斉。
うん、周りを見回しても、しっかりと見えてる。
はぁ、溜め息をついている万斉。
「どうした?」
「残念でござる。目の見えない晋助の代わりに、拙者晋助の手となり足となり頑張ろうと思っておったのに」
「じゃあ面倒なことがなくなっていいじゃねぇか」
なんでこんなに残念がってるのかが不明。
「だって、服を着せる楽しみも、風呂を入れるのも、アーンしてご飯を食べさせるのも全部無くなったでござるよ。あ、晋助!どうでござる、一日だけでも目隠ししてやってみないか‥‥ぅぶっ」
「んなこと考えてたのかおめーは!!」
手を万斉の顔に張り付けて距離を取り、立ち上がろうとするが、腰と足に 力が入らず、ヘナヘナと座り込んでしまう。
「着替えと風呂は拙者の手伝いがいるようだな」
ニヤニヤと笑いながら様子をこっちの眺めている万斉。
お前がやり過ぎっからだろ、と突っ込みたかったが、もっとと求めたのも事実で。
「変なことしたらぶっ殺すからな」
といいながらも、その長い手足に包まれる自分がいる。
「晋助に殺されるなら本望でござる」
平気でそんなことをいうこいつに。
「馬鹿」
と、いつも通り返す。
帰ってきたいつも通りの甘い日常。
いつも通りの、甘い一時。
大事な大事な時間。
終
20090722
[*前へ][次へ#]
[戻る]
無料HPエムペ!