4 診断
「これは‥‥‥おそらく心因性のものかと思われます」
微かに見えるほどにはなったが、それ以上見えない目にこっそりと鬼兵隊お抱えの医師を呼び、見てもらった。
「なんだそりゃ」
「光りの反応も悪くないし、神経もちゃんと働いている。後は考えられるとすれば、ストレスなどからくる心因性視力障害、というところですかな。何か、心当たりはないですかな?例えば、何かを見てショックをうけたとか、最近何か強いストレスを感じたとか」
思い当たるものは、ある。
あるが、それを口に出したくは無かった。
「んなもんねーよ」
「そうですか‥‥ま、眼球や神経自体は大丈夫なようですし、あとは脳腫瘍を疑うくらいですかね。とりあえずは二、三日様子を見てみましょう」
そういうと、器具やらなんやらを片付け始める。
「おい、もしその心因‥‥なんたらいうやつだったら、俺の目はどうなんだ。見えるようになんのか」
「そうですねぇ、そういった場合は原因さえ取り除かれれば、すぐにも見えるようになることもありますし、時間が経つと共に徐々に見えてくるのが多いですかな。稀に本人が見ることを完全に拒否している時は、その意思通りになることもありますがね」
「そうか。もういい、下がれ。このことは他の者には他言無用だ」
「わかりました。では、これにて失礼します」
初老の白髪混ざりの医師は、丁寧に頭を下げ、部屋を出ていった。
信用置ける医師だ。
他言はしないだろう。
−−−−クソッ。
こんなことになるなんて、どんだけだ。
どんだけ万斉のこと好きなんだ、俺。
昨日、あそこに行ったことを後悔しても遅い。
とりあえずは総督として、すぐにでも視力を回復しないと、士気に関わる。
そして誰にも知られてはいけない。こんな情けない姿を知られたくないのもあるが、今の状態じゃ、闇討ちされてもやり返す自信がない。
似蔵もなんとかなってんだ。回復するまでなんとかするしかねぇな。
そして俺は機嫌が悪いフリをし、部屋への出入りを一切禁止した。
出入り禁止なんてこたぁしょっちゅうだから、誰も疑うことはない。
ただ‥‥‥医者への連絡をつけた来島が、アイツを呼ぶことまでは頭がまわらなかった。
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