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1 業務命令



「嫌だ」

「俺の命令がきけねーっていうのか」


ジロリ、と目の前の万斉を睨む。


「命令、とあらば従うのが拙者の仕事ではござるが‥‥晋助、主はそれでいいのか」

「お前が1番適任なんだ。やれ」

「‥‥‥わかり申した。拙者、暫くは帰らぬ故、身の回りのことは他の者に頼むか自分でやるがよい」


そう告げて、バシンッと音をたてて襖を閉め、去っていった。
怒っているのは明らかだ。
久しぶりに聞いた、冷たい声。
低いその声がズシリと内臓に響いた。


しょうがねーじゃねぇか。


幕府方の動向を知りたくて、ある人物を探っていたところ行き着いたのは、歌舞伎町にあるクラブに働いている女。
どうやら愛人らしく、月に何度も一緒に過ごし、密偵による話しだと、自慢げに幕府の内情も話しているらしい。
固い幕内を探るより、派手で男好きらしい女から情報を聞き出したほうが手っ取り早いということになったのだ。

適任は、河上万斉。

何故ならば、相手の女はつんぽのファン。
だから言った。


「この女たらし込んで、情報聞き出してこい」


どうするかなんて、いいたくもない。一言、簡単に告げた。





あれから半月‥‥‥‥
万斉は一度も姿を見せてはいない。


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あきゅろす。
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