黒い太陽、白い月 2 最初は驚いたが、今は馴れた。 コイツは、ただ来る者拒まず、去る者追わずのタイプなだけということに気が付いた。 実際、俺と寝てても彼女作ったりしてる。 内緒だけど、俺だってたまに他の男とも寝るときもあったりする。 俺らはその辺は、要はセフレってやつに近いんだろうよ。 そのほかに求めるものは無く、ただ快楽に身を浸すだけ。 体の相性がいいから、隊をまとめる為にもそうしただけ。 恋愛なんて甘っちょろいもんはそこに存在していない。 していない。 「それはどういうことでござるか」 なんだ? 今日はやけに絡んでくるじゃねぇかよ。 「なんでもいいだろ」 口さみしくなり、箱の中の煙草を探る。 「んんんッッ」 フェンスに押し付けられ、強引に口腔を蹂躙される。飲み込め切れない唾液が口の端から垂れた頃、ようやく解放された。 「ぷはっなんなんだよ、一体!!」 「口が寂しそうだったので塞いでみただけでござるよ」 「唐突すぎんだよ!俺ァ今、てめぇの唇より煙草が吸いたいんだっつうの!!」 万斉はキスが上手い。 感じた体をごまかすべく、今度こそ煙草に火をつけようとするのに、こんな時に限ってライターつかねぇし。 や、なに動揺してんだ俺。 カチカチやってると隣から火が来た。 「それは拙者の余計なお世話というものでござったかな。‥‥‥‥‥晋助、煙草の銘柄変えたでござるな」 「ん?ああ‥‥‥前に吸ってたヤツだ。って、お前もいちいち細けぇ奴だな」 「まあ、ちょっと気になったでござるよ」 キーンコーン‥ 予鈴のベルがなった。 ここで万斉と話ししてもしょうがねぇ。 次の授業は銀兄のだ。 お手並み拝見といこうじゃないか。 少ししか吸ってない煙草を揉み消し、重い腰を上げる。 「よっと」 「晋助?どこに行く?」 「どこにって、教室戻んだよ」 「何しに」 「何しにって、授業受けに行くに決まってんだろうが」 「‥‥‥あの男の授業だからでござるか?」 「別に」 それ以上話しすんのも面倒臭かったので、扉へとスタスタと歩き出す。 「晋助!あの坂田という教師、晋助の知り合いでござるか?」 「あー、幼なじみ?知り合いちゃ知り合いだ。そんだけだ」 フェンスに寄り掛かったままの万斉にそう答え、階段を降りる。 何言ってんだ、俺。 そんだけってどんだけだよ。 ‥‥‥自分で自分が、よくわからなかった。 万斉に、何言い訳してんだ、俺。 階段の上を振り返るが、降りてくる様子は一向になかった。 そのまま俺は、万斉を置き去りにして教室へと向かった。 [*前へ] [戻る] |